和歌山電鐵  2270系「たま電車ミュージアム号」
 
  和歌山電鐵の賑やかな列車群はいつ見ても愉しいものですが、カラフルなおもちゃ電車が模様替え、たま電車ミュージアムがデビューしました。真っ黒な車体は「黒字を願って…」とのことで、赤かった頃の京成電鉄を思い出すようなエピソードの存在に「たまったもんじゃない」と言ったとか、言わないとか…(^^;;
2021年9月におもちゃ電車の運行が終了し、約3か月後にお披露目というスピーディな改造になりました。他の車両に混ざって運用に就いていますが、どうも充当列車が結構決まっているようで、和歌山電鐵の列車別ダイヤをたまに見ても、夜走るような設定を見た記憶がありません…。外観の塗装が闇夜に紛れてしまうことを恐れているのか、はたまた… ナイトミュージアムもまた愉しいと思いますし、それこそ和歌山行きでゆっくり見られるとめでたいなぁ…と思うものですが…あれ?!
(取材・撮影 和歌山電鐵貴志線・和歌山〜貴志)

 

 

 

 
車内全景です。左の画像は貴志方車両、右の画像は和歌山方車両です。2ドアでロングシートの座席配置を基本としていますが、特に和歌山方車両では若干見慣れたロングシート車よりも床が狭いように感じます。この大胆な構成で地元のラッシュには対応できているのでしょうか…(^^;;
外観同様、内装の色としてはあまり登板の機会が無い「黒」を基本に構成しています。故にこれまでの通勤電車ではあまり見たことが無い空間に仕上がっていますし、光の差し込み方によってはフローリングの床が大変映えます。こういう車両のデザインを作る仕事って楽しいんだろうなぁ…と想像する一方、これだけ作り込んでも乗車中はスマホに目を落とし、終着駅では出口に急ぐ常連と思われる通学客の姿…人の心を掴むのはつくづく難しいものです…。

 
乗務員室との仕切りです。左の画像は貴志方、右の画像は和歌山方の仕切りで、構成自体は他の車両との差はありません。たま電車ミュージアム号は装飾で勝負といったところでしょうか。今回取材中にカーテンを引くシーンは見ませんでしたが、ぜひ、カーテンの模様も見てみたかったものです。
ドアを挟んで手前側は優先席に指定されている区画になります。が、優先席の表記は申し訳程度。いわゆるSOSボタンもあまり目立っていないようで…777個の猫のイラストをまぶすのも愉しいですが、公共交通の事業者として声高らかに言わなければならない部分は、いかなる車内においても声高らかに言わなければならないと思う今日この頃です。

 
車端部です。左の画像は貴志方、右の画像は和歌山方です。妻面の装飾は「おもちゃ電車」の時のものを上手く流用したようなデザインです。その手前、和歌山方の車両の向かって右側には座席が設けられていますが、おもちゃ電車時代は棚と申し訳程度の奥行の腰掛が設置されていて、「お、わかりやすくしたなぁ〜」と思う次第。窓はありませんが、頭上にはこれまた面白い仕掛け、耳には猫の鳴き声…可愛いワンパターンな猫の声なので、ご安心を(^^;;

余談ですが、あの時期を迎えた猫と猫の鳴き声、恐いですよねぇ…(中途半端な田舎者の戯言)

 
引き続き戸棚として活用している貴志方の車端部と座席に換装した和歌山方車端部を見比べてみます。座面の下の形状まで流用した関係で若干面白い形の座面を採用している一方で、ヒーターが収まっていそうな部分は装いを一新、木枠こそ用いていないものの縦の格子は焦げ茶色に塗られています。
戸棚の天板はちょっとした小物も展示されていて、車内を散策するのも愉しいかと思います。それだけに、ここの区画の吊革はかつてのおもちゃ電車のような長いベルトのものを用意して欲しかったです。

 
車椅子スペースです。左から貴志方、和歌山方の順に撮りましたが、基本的には同じような構成で手すりを設けています。車椅子のお客様にもこの愉しい雰囲気を間近で愉しんでもらえる仕掛けを作っている点は良いですし、ここだけ吊革がカラフルになっているのも車椅子スペースの存在を暗示したものであるとするならば、なかなか考えておられると思います。
面白いのはこの角度からは見えませんが、ショーケース下のテーブルに車椅子とベビーカーのピクトグラムが入っている点で、立っている方でもあまり視線を変えずに車椅子スペースが探せられる、ナイスアイデアだと思います。
…え、あまり目立っていないって?!それでもおもちゃ電車よりも目立つように工夫されていますが…(^^;;;

 
黒い天井ですが、様々なイラストや写真(!)が散りばめられている愉しい天井です。この黒がかなり周りを反射させるので、写真を撮る時に映り込みが気になる方は要注意です。
照明はこれまでなかなか見ることが無かった電球色の丸い照明で、レトロな雰囲気を演出したかったのでしょう。これが思いの外眩しくて、品の無い取材班に至ってはイカ釣り漁さえ思い浮かべてしまう始末ですが、ドラ猫が咥えていたのは魚です。

あまり上手に撮れなかったのですが、妻面に近い席に座って妻窓から車内を見ると、ガラスに映った丸い照明がカーブに合わせてゆっくり動く…そんなメロウなムードをじっくり愉しむことができます。数々の展示品がある中で妻窓を見続けるのは勿体ない感じもしますが、耳にはしっかり猫の鳴き声が聞こえてきます…(^^;;

 
床です。どうやら貼り替えたようで、おもちゃ電車とは異なる模様、それも大人しい雰囲気に落ち着いています。以前東急世田谷線の車両で肉球を床に配した車両に出会ったことがありますが、たま電車ミュージアム号は床にもしっかり作品が…(^^;; 私は大人なので歴史の教科書で出てくるような表現は避けますが、この時点で気が付きました、これはミュージアムではない、アミューズメントパークだと…(^^;;;

 
なんということでしょう、ドアまで黒く塗ってしまいました(^^;; 左の画像は片開き扉、右の画像は片開き扉になります。窓にも様々な装飾が施されていますが、残念ながら上手く撮影することができませんでした。
模様替えをした程度で他の車両のドアと同じ形状のものを引き続き用いています。和歌山電鐵の車両を見ていると他のドア周りもシンプルな装飾にまとめているので、他と一緒…と言われれば納得のドアです。

 
窓周りです。たま電車ミュージアム号ということでお得意のナチュラルな額縁でミュージアムっぽさを演出しています。うめ星電車のロールカーテンの引きにくさを思い出すにつれ、シンプルな意匠でまとまったのは嬉しいものの、根本的にロールカーテンが適さないような背もたれもあり、かつロールカーテンを引くとこれまたイラストが登場という仕掛けもあり…側窓と背もたれ、設計した人は別ですか?!とたまに首をかしげたくなってしまいます…
そうそう、車内全体にわたり荷棚が無いので荷物が多い方は要注意です。

 
ここからは怒涛の座席であでー。貴志方先頭車のドア〜ドア間の座席から見ていきます。
今回のリニューアルに際し、おもちゃ電車前の改造の際にモケットのみ変えたと思われる座席はなくなり、多種多様な座席がおかれました。早速、カフェで見かけるような細身の座席と、和歌山電鐵ではあまり見る機会がなかったソファが登場です。
多種多様な座席を愉しめるミュージアムというと北浦和の埼玉県立近代美術館の「今日座れる椅子」を思い出します。あれほど多種多様なグッドデザインな椅子が揃っていれば良いのですが、こちらは公共交通機関、「動く」ことも、「座席を必要としている方がいる」ということも忘れてはイケマセン。

 
背もたれが様々な形でまとめられた1人掛けの座席、そしてロングシート調のソファです。後者はロールカーテンが引きにくい格子がついていますが、おもちゃ電車の時は窓より高いソファは確かなかったと思います。肘掛けのモケットのアクセントが良いですし、足元がヒーターから離れているのは良心的ですね。
1人掛けの座席も背もたれの形状が愉しいですね。もう少し座席どうしの間隔を広げた方が座りやすかったと思います。

 
貴志方車両のドア〜ドア間の座席が続きます。左の画像のソファはかつておもちゃ電車でも似たような形状のものを見かけましたが、それとは別物で、新品だと思われます。なお、この座席は優先席にあたります。
1人掛けのソファも面白い配置ですが、ペアかと思ったら左右で肘掛けはないし、背もたれの高さは違うし…どのような利用者が座ることを想定して作ったか、訊いてみたいものです。

 
貴志方のドア〜ドア間には図書コーナーとディスプレイが備わっていますが、あれ、なんだかあっさりしていますネ(^^;;
そして赤いソファ調の座席が3つ並んで、うむ、確かにミュージアムっぽい雰囲気が出ていますネ。

 
貴志方の車端部には動物の背もたれがシルエットになった座席がスタンバイ。これ、おもちゃ電車ではドア〜ドア間に設置されていた3席を車端部にもってきたようです。シルエットの可愛い座席に疲れた猫背のオジサンが座るシュールな夜というのが個人的にはツボでしたが、このたま電車ミュージアム号では後ろの窓がありません(^^;;
それにしても…たまの大きい写真の存在感たるや… よみうりテレビ「ワイドショー今」の「謎の女性の顔写真を大きく引き伸ばした」セットを思い出して、嗚呼、このあたりの見せ方は全然変わらないモノですねぇ…と浜渦さんのエエ声で言ってみたいものです。

 
続いて和歌山方車両の車端部です。左の画像、京成百貨店の包装紙のようなモケットのソファはおもちゃ電車に設置されていたものをうまく再活用したものと思われます。その反対側、なぜかここだけ座面の模様が浮いていますが(^^;; 棚を撤去して新設された座席5席です。ハイバックな背もたれが垂直で、寄りかかると後ろの壁に良い音でぶつかります(^^;
そして妙な形状の座面ですが、前に垂れた部分のモケットのお仕事は…あるかないかの2択で申し上げれば、「ない」です(^^;

 
和歌山方車両、乗務員室側から座席を見ていきます。ソファ調の座席は和歌山方の車両にも設置されていますが、ユニークなのはコの字方のソファ。和歌山電鐵では初めての形状のソファになります。ただ、コの字に3人座ると足元がどうしても狭くなってしまいますし、足元が抜けているのでドアの開閉時には寒い風が足元を駆け抜けます。
肘掛けを思わせる天板が角についていますが…どのように座るのが最適解でしょうか(^^;;

 
貴志方の車両よりも若干木の背もたれが多いかな?というラインナップです。丸みをつけて、プリントして…とあれこれ工夫している様子が伺えます。おもちゃ電車の時にも同じような座席はありましたが、その時に見た背もたれよりもくたびれている様子は見られません。
両開きドアの前にはまたまた着座方法が色々考えられて愉しいソファが置かれています。出っ張り部分に座ると背もたれがありません。ちょっと腰かけるようなシチュエーションを考えているのかな、と思うところですが、座り方によっては通路に相当する部分の幅を狭めてしまうこともあり、せめてもう少し中ほどで展開できなかったかなぁ…と悔やんでしまいます。
でも、自宅に置くには良さそうな形状ですね。そのまま仮眠出来そうなスタイルで(^^;;

 
貴志方、和歌山方で肘掛けのチョイスがちょっと異なるかな…というソファの数々。
せめてもう少しオリジナルに忠実な座面、背もたれであればゆったり堪能できるのですが…


こちらの背もたれもおもちゃ電車にあったものに装飾をプラスしています。固定された座席は以上になりますが、ここまで怒涛の勢いで座席を見ていくと、もはや座席の間でひょっこり顔をのぞかせるネコも愛おしく見えるものです。
背もたれも遊びが無く、見た目以上に狭さを感じる3席になります。

 
座席と言えばもう1席。こちらは固定されているものではなく、移動式のテーブルとセットで使うお子様用の椅子です。
形状も可愛く、軽く作られているところが良いのですが、問題は場所。
壁一面ホワイトボード…という区画でお子様が自由にお絵描きできるというシチュエーションですが、子どもがホワイトボードに絵を描いている時につかまる手すりが一切ありません。
これ、加速や減速の時に姿勢が崩れて怪我をする可能性があります。座って描くとか、横方向の手すりを増設するなど、単純に動いている電車の中で「立ってペンを持つ」シチュエーションを思い浮かべた対策を講じるべきです。


おもちゃ電車の一番の魅力はたま電車ミュージアム号でもしっかり引き継がれていました。うまく側面も装飾を施し、猫が上から不正を監視…じゃなかった、愉しくカプセルを開ける様子を眺める、なんとものんびりした、良い空間です。
どこか1台で構わないので、特典をつけたおみくじ的な要素のガチャガチャがあると、普段乗る方も愉しめるかなぁ…と思います。1等があたったら岡山へご招待!とか…いかがですか?


怒涛の座席であでーは以上で終了となりますが、天井には何かを通す穴が2つ…。
これ、完成披露イベントの際にお子様用のブランコのような座席を設けるための穴になります。実際の運用ではさすがに外しているようですが、動いている車内を縦横無尽に動き続けるブランコ…見てみたかったものです(殴


このようなアナログなカラクリもまた見ていてほっこりするものです。
普段はスマホを見つめるだけのひとときになってしまっているそこのあなた、たまには車内をくまなく歩くと、何か素敵な発見があるかもしれませんよ。そんなアミューズメントパークな車内、普段遣いは苦手…そんな線引きが見えてきそうな車内でした。
 
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