土佐くろしお鉄道  9640形
 
  土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線の主力車両です。2002年の開業とともに外デッキつきの特別車が2両、一般仕様の車両が8両製造されました。今回はその一般仕様の車両を取り上げます。
切妻にブラックフェイスは中村・宿毛線の車両とは一線を画しています。見た目は大人しいですが高架のごめん・なはり線を心地良く走る姿はこの時代の車両で度々みられる「能ある鷹は…」ではないかと思います。JR四国の1000形ディーゼルカーとの併結や、高知から土佐山田までJR土讃線をひた走る運用もあります。
ごめん・なはり線はやなせたかしさんが駅のキャラクターをデザインしたことで知られますが、個人的には形式番号がツボです。これ、後継車が出た時に困ると思うので今から言っておきます、次の車両は4126形だと…大胆予想!大漁苑!!
(取材・撮影 土佐くろしお鉄道 後免〜奈半利)

 

 

 


車内全景です。大胆な車内で、見た目車内のおおよそ4割が奈半利方の転換クロスシート、高知方の6割がロングシートです。大体ドア周りをロングシート、車内中間部をクロスシートにするケースが多いので、どちらかに寄せる構成は斬新です。
モケットの色はこの車両ではロングシートがピンク、転換クロスシートが青ですが、逆の配色の車両もいます。ここも揃えてくるケースが多いので、飽きさせないささやかな工夫が見られる…ということでしょうか。それにしても、大きな窓が心地良いです。


奈半利方の乗務員室との仕切りです。排気筒の関係もここでまとめてといった具合です。第三セクターではお馴染みの半室構造の運転台、そしてちょっとずれたドア配置がポイントです。ステップがないこともあり、思いのほか広々と映ります。
新しめの車両ですが、整理券発行機がオレンジ色の躯体だったり、運賃表示器が昔ながらのものを使っているのがちぐはぐで面白いところです。そのちょっと上、乗務員室との仕切りの上の方に機器をくっつけている関係で、「頭上注意」のピクトグラムがお目見えしています。2011年の取材時には無かったので、後付けの機器になります。なかなか丁寧なご案内です。


高知方の車端部には車椅子スペース、トイレが設置されています。割とトイレの出入りの視線が気になるかどうかギリギリの位置まで座席が展開していることが伺えます。座席の前には優先座席を示すステッカーが貼られていますが、こちらも後年貼られたものになります。モケットだけでも十分目立っているとは思うのですが…。
ワンマン運転の関係で後ろ乗り前降りということもあり、この部分に立客、特に始発の後免にして高校生が固まってしまうシーンもしばしば見かけました。吊革はドア付近まで片側がにょきっと伸びています。


乗務員室の隣のスペースです。意外とドアから正面まではあまり広くありません。この部分を車椅子スペースに充てる会社も多いですが、トイレ脇に車椅子スペースを設けた理由が大いに頷けます。この部分でもドア扱いができるようになっています。

 
車椅子スペースと大きなトイレです。非常通報機は車椅子スペースではなく、トイレとの仕切りに設置されています。ちょっと高い位置にあるので車椅子に座ったまま押すのは至難の業、何かあったら一致協力で押せるといいな、と思います。
車椅子スペースは固定器具と握り棒がスタンバイ。トイレは大きい引き戸が特徴です。土讃線を併結して走るJR四国の1000形は長い事トイレがなかったので、併結運用ではさぞかし重宝した事かと思います。トイレの使用灯も備わっていますが、正直小さくて随分上の位置にあるので、目立つような、目立たないような…という中途半端な大きさです。


天井です。吊革は転換クロスシート部分には展開されていません。1両という限られたスペースの中で完全に遠近分離を図ったような格好ですが、転換クロスシートも背もたれが伸びているので、吊革が通っていると単に邪魔だと思われていたかもしれません。それにしても…大胆。
蛍光灯は最低限の設置に留めています。


床です。濃い味付けがポイントのクリーム色です。中村・宿毛線の車両もベージュ一色でなんとなく似たような床を選択したのでしょう。ただ、あちらはモケットのバリエーションが大変なことになっているので、まだ座席モケットが2パターンで収まっている9640形は大人しい方かと思います。

 
ドア周りです。ステップレスのドアの手前には滑り止めのシートがやや暗い色で設置されています。ドアそのものはゆっくり開け閉めされるタイプのもので、ビックリするような特徴はありません。
これは帰ってきてから気が付いたのですが、左の画像のドア周りの握り棒、滑り止めの黒いゴムが巻かれています。ドアの画像は3か所撮影したのですがこのゴムがついているのは1か所だけで、しかもくたびれ方が… なぜ、ここだけ?!


ドアボタンです。見るからにパソコンに入った丸ゴシック体で一から表記を作り直したような体裁のように見えますが、さらにその上から点字シールを貼ったり、テープで表記を消したりとなかなか大忙しな表記がウリです。でもこの表記、かなり見やすいと思います。ただ、車内側のボタン下のところに小さく挿入した「車内での携帯電話のご使用はご遠慮ください」は他の場所にもう少し大きく書きたかったところです(^^;;


大きな固定窓です。土佐くろしお鉄道のウリの一つがこの窓で、縦方向にも大きくしたTKT8000形とは異なり横方向への広がりを意識しています。風光明媚なごめん・なはり線にはうってつけ、窓の外の駅キャラクターもバッチリ見えます。

 
座面下のガラガラっぷりが哀愁を誘うロングシートです。これだけ長くてもヒーターが端にちょこんと見えていますが、こちらは後付けの温風暖房で、2011年に撮影した画像を見返すとついていませんでした。座席下に張り付いているヒーターが力不足だったのでしょうか、細い脚は見ていて羨ましいような、ちょっと心細いような…。
硬めながらしっかりバウンドする座面に切り立った背もたれの組み合わせは転換クロスシートと役割を二分しているようにも感じます。優先座席の深緑のモケットがやたら存在感がありますが、その袖仕切りと座席フレームが別個になっている点が面白いです。

 
転換クロスシートです。ヘッドレストの部分がニョキッと伸びた独特なスタイルで、固定されている座席も背もたれの形状をそのまま用いています。格好良さより実用的です。
この転換クロスシートは背もたれが高いため、座っているかどうかがなかなかわかりにくい致命的な欠点を持っています。周りが見えない優越感との勝負だと思うのですが、私としては「空いている席が一目でわからない」ことや「一見さんが情報を得るためには背伸びしないと手に入らない」敷居の高さがいわゆる「身近な車両」というカテゴリから一歩はみ出しているとしか思えないのです。
勿論、乗り慣れている常連さんにとっては最高の空間です。周りの視線が気になりづらい空間が運賃だけで手に入る…かもしれないんですから。


転換クロスシートです。やはりここもヘッドレスト部分が伸びている分普段見慣れた転換クロスとのバランスを補正しようと脳内が必死です。ヘッドレストが伸びたので取っ手がつかみやすくなったのは吉報ですが、この部分はもう少し大きい取っ手にしてあげると、通学で混雑する車内でさらに喜ばれると思います。
ヘッドレストカバーまで青く染めて9640色全開ですが、背もたれの形状が「さもあるものの上をにょきっと伸ばしました。」的なシルエットで、この形状のとおり座ると上半身のどこかしらが「あ、ちょっと無理しているな」と思います。ただ伸ばすだけでは勿体ないです。
既製品の袖仕切りを用いていますが、アームレストの色がモケットの色に合っていて、ここはなかなかお洒落だなぁと思います。取っ手もその色に合わせても面白かったと思います。


車端部のみのご紹介ですが…♪フレーフレフレーフレー。
天井に施工したタイガース柄の模様、床に施さなかったのは粋な計らいです。
 
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