東急電鉄  田園都市線8500系
 
  「玉電」が地下に潜った頃、1975年に登場した田園都市線用の車両がこの8500系です。東急お得意のステンレス車体で、東横線で既に走っていた8000系を思わせるボディはその後営団地下鉄半蔵門線、そして東武線へと乗り入れていき、東急一のロングラン車両の一つとして広域に渡って活躍するようになります。
そして、1976年にはこの車両がローレル賞を受賞。過去には名鉄モ600形や黒部峡谷鉄道の電気機関車などが受賞しており、技術やデザイン面においても鉄道友の会のお墨付きとなり、東急では初の受賞でした。しかし、近年では無個性的なデザインや走行音の大きさが仇となるのでしょうか、じりじりと人気に陰りが伺えるのも事実。次にこの車両に大きく陽が当たるのはいつになることやら…。
(取材・撮影 東急田園都市線/青葉台・中央林間)
画像提供ありがとうございます(■印):Kaiharaさん

 

 

 


車内全景です。実に賑やかな車内です。4ドアロングシートの車内は乗り入れ先の東京メトロや東武と同じ仕様になります。
かつては蘇芳色、つまりワインレッドのモケットを使っていたそうですが、今のモケットでもそんなに違和感はありませんね。ただ、両側に開く貫通扉や天井を見るとちょっとした「時代」を感じてしまいます。

なお、東急田園都市線と乗り入れ先の路線では女性専用車を導入しています。区間によって車両の指定が異なるため、渋谷より、中央林間よりのどちらの先頭車にも女性専用車の告知ステッカーが貼られています。うまく統一できなかったものなのでしょうか、机上で考える限りでは結構ややこしそうな感じがします。
あ、取材は女性専用車対象時間帯を外して行っていますので、念のため。


先に乗務員室との仕切りを見てみます。真ん中の乗務員室への扉がやたら目立っていますが、その左側は壁だけで窓があるのは真ん中と右側だけ、という具合になっています。左側に窓が無いのは機器の関係でしょうか、それとも地下鉄への乗り入れを考えた上での設計なのでしょうか・・・。
混雑激しい田園都市線、吊革はしっかり先頭部分まで延びています。そして・・・

広告の裏にはこのようなプレートがありました。ローレル賞受賞記念のプレートです。
これ、何も知らないフツーのお客さんがふとしたときに広告を見つけて「発見!」した時って、結構「トリビアの井戸端会議」のネタになりそうな気がするのですが・・・いかがでしょうか(^^;;;
1編成だけでなく数編成に取り付けてあったそうですが、ロングラン化と廃車が進んでいる今では見つけるのもなかなか難しい…かもしれません。そして、それよりも見つけるのが難しいとされるのがステンレスの技術を東急にバックアップしていた「パッド社」というアメリカの会社のプレート。ウィキペディアによると今では1編成にしかついていない!そうです…。自分もモノホンを見たことがありません。


ちなみにローレル賞受賞プレートが無い扉はこのように隅から隅まで銀尽くし。これがフツーの姿なのですが、やっぱり何か物足りない感じはしますよね。うーん…。せっかくだったら鼻高々に全部の編成につければよかったのに(^^;;っていうわけにもいかないでしょうか・・・。


車端部は座席モケットと貫通扉や車椅子スペースの有無などの関係で数種類あるのですが、そのうち3種類ほどを矢継ぎ早にえいやっと出していきます。
まずは貫通扉がついている車端部です。全体的にカクカクとしたイメージで、そのあたりの雰囲気は外観に通じるものがありますね。また、貫通扉は両開きですが、片方開けるともう片方も連動して開くようにはなっておらず、大荷物を持って移動する時などはちょっと不便かな、という感じがします。


その反対側の車端部(^^;;;連結部分の灰色の鉄板が見えているようにこちら側には貫通扉がありません。
先ほどもそうでしたが、優先席ゾーンに該当する車端部では、吊革を黄色のものに変えて、壁に黄色いステッカーを巻いています。これは携帯電話の電源オフエリアを示すためのもので、やはり色が色だけに特に側扉の戸袋部分ではかなり目立っています。ただ、妻窓があるため、側窓から妻窓にかけての部分や貫通路から妻窓にかけての部分にある黄色いステッカーは逆にあまり目立っていないかな、という気がします。

しかしながら・・・これのおかげで賑やかさがかなりアップしましたよ。広告や優先席のモケットがおとなしく見えるくらい(^^;


そして車椅子スペースと抱き合わせの優先席区画です。両側に貫通扉が無いと意外にスッキリしたように見えますね。
優先席込みの区画なので本来なら車椅子スペースにも黄色いステッカーがぐるぐる貼られるはずなのですが、片側だけしか座席が無いからでしょうか、車椅子スペース側は何も貼られていません。さて、境界線はどのあたりなんだろう(^^;;


その車椅子スペースです。東急は車椅子スペースの設置に熱心で、全編成に整備済みという偉業を達成しています。この8500系では渋谷よりから3両目、中央林間よりから2両目の2箇所に設置されています。
機能としては窓を固定にし、握り棒を1本設置した程度で非常に簡素なものになっています。車椅子にはストッパーがあるとはいえ、都県をまたがった長距離移動を強いられる可能性もあるのにずっと棒を握らせるというのは、特にお年寄りの方にはしんどいかもしれません。バリアフリーを積極的に行っている素晴らしい企業故に何かもう一工夫、欲しいなぁ。


さて、登場した頃の8500系にはこのような電動カラースライド広告表示機が車端部にあったようです。画像は鉄道ジャーナル1976年10月号に掲載されていた写真からそれとなく作ってみた物を現在の車内に合成したものです。従ってやらせ画像なので現在はこの表示機はありません(^^;; 資料がネット上にも、書籍上にもあまりないようで、撤去時期や設置編成数、コマあたりの広告料などは全然知らないのですが、そのRJ誌の写真で見る限りでは外についている方向幕と同じようなシステムで、グリーンバックの幕に広告を書き、それを蛍光灯で照らす方法だったようです。
撤去跡が見られる車両もあるそうですが、個人的には電車のバスと博物館さんに「体験マシン」でも構わないので復元、展示して頂きたい次第であります。何せ画期的かつ、いまのTOQビジョンにつながるかもしれない広告媒体なんだから。


天井です。・・・吊革が画像の半分くらいを占めていますが(^^;; 中央にドカンと設置してあるのは冷房になり、その奥には扇風機がスタンバイ。ヒーヒーフーの精神で車内を涼しくしてくれます。ということで、パッと見平べったくも見える天井だけど、ほんのり丸みを帯びているのがこの天井の最大の特徴です。一時期フラットな天井への更新も行われていましたが、置き換えが始まるとその更新はストップとなってしまいました。


そして扇風機。白い羽根に銀の細かいカバーが美しいですね。そしてカバーの部分にはToshibaのマークが。いやぁこのロゴマークだけで軽くお茶碗2杯くらいたいらげそうですね。そして気分で歌いたくなってしまいます、あの歌を…いや、今日はやめておきましょう、きっといつか8500系のページで出てくるはずだから(^^;;;
よく見ると駆動部分にもToshibaのマークがあり、そちらのほうがくっきり見えます。よろしかったら意味も無く青色レンズの眼鏡でもかけて(^^;;探してみてください。


一方こちらは随分と太いダクトのようです。これは扇風機の代わりに冷房のダクトを延長したもののようで、一部の8500系に設置されているようです。以下、画像をご提供くださったKaiharaさんによる解説です。


フラットに改造された冷房装置の一部です。扇風機があった一区画を取り払い、スリット状に冷風吹き出し口が設けられています。なお、吹き出し方向は固定(貫通路方向に向けて)なので、夏のラッシュ時などは着席している場合や風が当たらない方向にいると・・・

かなりの地獄を味わえます(殴

解説ありがとうございました。扇風機のようにかき混ぜてくれないのがガンになっているようです。
しかしまぁ・・・自分も田園都市線のラッシュのすごさを体験したことがあるのですごくよくわかるのですが、あのラッシュでこの設備・・・地獄以外の言葉が見当たらないかも、ですね・・・。


さらにさらにKaiharaさんの手によってもう一種類あることが判明しました。改めて感謝っす!
横がだめなら縦にするか!とばかりにラインデリアのような形状で吹き出し口を作っています。この中に実際にラインデリアの「素」が入っていたらこのような改造を一生懸命施した東急グループの中の人に「きょういちGJさん(→埼玉限定ローカルネタ^^;;)」を差し上げたいところですが、果たしてこの中は・・・?!
今度出くわしたらその真相を探って、ここでレポートしたいと思います。


床はシンプルにブラウンのものを。8500系に限らず9000系などでも見ることができる、東急のスタンダード仕様です。


続いてへそだしルックの熊さんが大活躍のドア周りです。貫通扉とは違い、多少丸みを帯びた窓ガラスが特徴。ガラスの支持方法もあまり目立たない金属のものを使っているようです。この辺りの技術はさすが東急!だと思います。
鴨居部まで銀の無塗装になっており、その両脇には広告枠が。結構位置としては高いと思うのですが、大人の視線に合わせた配慮なのでしょうか。

そしてドアの両脇の空間の狭さには閉口してしまいます。これは座席数をできるだけ多く取ろうとした代償で、事実ドア〜ドア間の座席は8人掛けと、通常の20m通勤車よりも1人分多くなっています。これは歓迎すべき事でしょう。
ただ、立ち客はどうしてもドア周りに溜まりがち。そしてこの部分の立席スペースが取れていないため、結果的にちょっと混んだだけでドア幅が狭くなり、遅延を招いているのが実情です。
そのため、後期に製造された車両や更新車ではドア〜ドア間の座席数を7人に戻してこのスペースの確保に走りました。ただ、余命の関係でしょうか、この車両ではそのままになっています。

東急としてもわかりきっていることだと思うので、あまりこういうことは言いたくないのですが…「座れれば天国、立つと地獄…」なんだか地味にそう感じさせている車両だなぁ…という気がします。


そのロングシートです。背もたれには座った跡が残っており、茶色のモケットとオレンジのモケットがそれぞれ4人掛けだということを暗示しているわけですが、座席幅が狭いからでしょうか、オレンジと茶色が交わっている部分の着席跡がちょっと大きく1つのまとまりに見えるかなぁ…という気がします。これ、空いている時を中心に7人掛けで使っているような雰囲気を思わせます。目撃したわけではないのですが、場合によっては混んでいてもなかなか着席人数通りに座ってもらえていない…ことがあるのかもしれません。

袖仕切りはシンプルに肘掛も兼ねたデザインのものを使っています。

 
車端部は4人掛けになっています。ただ、これも3人掛けとしての活用例が多そうです。
モケットはオレンジと茶色のどちらかが使われていて、2つのゴチャマゼはありません。また、このモケットで優先席扱いという区画もあります。
座り心地はウレタンの関係でしょうか、座面の沈み込みが今ひとつかな、という感じがしました。かつては逸品の座り心地!だったらしいのですが…。


最後にちょっと褪色気味の優先席です。何も語りません、心行くまでこの素敵ですばらしい、わかりやすいモケットをご堪能ください。いやぁ、これがなくっちゃ、ですよ。

windowsのスクリーンセーバーに宇宙といって、星が遠くからずかずか飛んでくるというノリのものがあるのですが、その星がこのシルバーシートのマークで、背景が青のスクリーンセーバーを東急が出してくれたら…きっと自分は買います。あとは売れなくても知りません(殴
 
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