とさでん交通  590形
 
  2005年に名鉄美濃町線が廃止になり、続々と600V対応車の譲渡先が決まる中、この車両にまで白羽の矢が立つとは思いませんでした。昭和30年代生まれの古豪、とさでん交通の590形です。
非冷房車が残るとさでん交通にとって冷房車は羨望の眼差しだったのでしょう。3両いたモ590形のうち冷房車の2両が高知へ渡り、非冷房車の1両は台車などが提供されました。現在は高知駅から桟橋通五丁目までの運転がメインのようで、高知駅でスカーレットの路面電車に会うと、一瞬あれ?!と思うものです。それでもJRの高知駅から横断歩道を渡ることなく、安心して乗車できるというのが嬉しいですね。おっと岐阜から足音が…
見た目の大きな変化は正面の窓の押さえと側窓のいわゆる「バス窓」化、そして車番のシール化です。それでもなおスカーレット一色にこだわっています。
(取材・撮影 とさでん交通桟橋線・高知駅〜桟橋通五丁目)

 

 

 


車内全景です。バス窓は思ったよりもスタイリッシュでその変化に気が付くまでに時間がかかりそうですが、それ以上にこの天井から座席に至るまでの配色、大いに懐かしさを感じるものがあります。細かいことを気にしなければ名鉄の雰囲気に浸れそうです。その細かいところが多すぎるのがまた乗った時の楽しみですが… 進行方向左側に電停を設けているとさでん交通では、進行方向右手の前扉と左手の後扉を潰し、ドア降車ボタンも一新しています。

 
乗務員スペースとの仕切りです。左の画像が車椅子スペースも備えた高知駅方、右の画像が桟橋通五丁目方の仕切りです。どちらも片側のドアやステップを埋めています。左の画像、車椅子スペースと座席の間の機器箱は名鉄時代から存在しています。
LEDの運賃表示機はとさでん交通にて設置されたものですが、名鉄時代はほぼ同じ部分に別の運賃表示器を設置していました。
それにしても、名鉄時代を見ていてもあまり広くないスペースだっただけに、よく運賃箱が置けたなぁ…と思います。名鉄時代の運賃箱は仕切りの真後ろでした。


冷房が誇らしげな天井周りです。蛍光灯は冷房のダクトの周りに配置されています。天井から直接ぶら下がった吊革も名鉄らしい特徴ですが、とさでん交通ではちょっと珍しい存在です。非冷房車の吊革はその支持方法が美しかった記憶がありますが、こちらは実用本位なのでしょう。実用本位…といえば、中吊り広告の吊り具が見当たりません。こちらはとさでん交通でぶら下がっている車両の方が珍しいので、たまたまこれで良いのだ、だったオチです。


床です。名鉄時代は恐らくグレーだったと思われます。ブルーグレーの床はステップを埋めた部分もキレイに継ぎ接ぎなく貼られています。良い色です。そしてチラリと見える点検蓋の鉄板もなかなか趣深いです。


中扉です。各電停の乗車はここからです。クリーム色の扉は名鉄時代からの変化はありませんが、周りの雰囲気は何かと変化があります。ステップ周りのいわば「段鼻」に相当する部分の滑り止めも細いものになっていて、昔の車両にありがちなすり減った鉄の「段鼻」は一新されています。スッキリしたドア窓も含めて、よく手入れされている印象です。
鴨居部の「入口」の表記は高知に来てから入れたものだと思いますが、この「入口」も良い味出しています。

 
出口扉と、扉を埋めた部分の比較です。右の画像の扉を埋めた部分は車椅子スペースに指定されており、カーテンが無い代わりに着色ガラスを用いています。内側から見ていて…元々を知っている方は違和感を覚えるかもしれませんが、なかなかキレイに埋めたなぁという印象です。尤もこの部分に車椅子が止められるかどうか、取り回しは気になりますが…。
出口扉は片開きの2連扉で、昭和30年代の路面電車でよく採用されていたスタイルです。ここも窓ガラスがスッキリしています。運賃箱の他に戸袋のドアエンジンの部分に仕切りを設けているので、ドア開閉の動作は思ったよりも目立ちません。


ドア窓に改装した窓周りです。荷棚が一部撤去されていますが、撤去された部分は配線カバーがなかなか目立ちます。

 
高知駅方のロングシートです。名鉄時代に優先席に指定されていた名残が背もたれにありますが、現在優先席は別の部分に設けられています。座面下の蹴込みが出っ張っていたり引っ込んでいたりしますが、座面の奥行きが短いこともあり、引っ込んでいた方が良いなぁと思う場面もしばしば。そんな座面下や袖仕切りも含めて、名鉄時代の名残がふんだんに残っています。

 
桟橋通五丁目方のロングシートに優先席を2席設けています。反対側はこげ茶の柄モケットがひたすら展開しています。袖仕切りがチャームポイントですが、このモケットもとさでん交通御用達の蘇芳色や緑のモケットに交換される事なく使い続けています。
座席の画像はいずれも左の画像がドア〜ドア跡地の座席、右の画像がドア〜ドア間の座席です。元々座席の長さはどの部分も同じで、元3ドア車ならではです。座面のバウンドもそれなりに健在ですが、電停の関係もあって少し走っては止まり、また少し走っては…の繰り返し。握るところがもう少しあるといいな、と思ったのは美濃町線時代を深く知らない取材班の情けないヒトコトです。


座面の十字の切込み。こういうところに昭和30年代のレトロなセンスを感じるものです。作られた昭和レトロの世界に、ここまで再現できているものはありますか?と問いたい私は、天を仰いでこの穴の数だけ塩けんぴが食べられたらなぁ…と思うのでした。
そう、やめられない、とまらない…のは「塩けんぴ」と「かっぱえびせん」だけでお願いします。
 
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