西武鉄道  4000系
 
  西武秩父線といえば急勾配が続くということもあり、開業以来長らく101系がローカル輸送を担ってきました。しかし、ロングシートである点や車内保温性にも難があったのでしょう、1988年に101系を改造してそれらを解消した車両が登場しました。4000系です。
2ドアはすべて半自動ドア、車内もドア〜ドア間にクロスシートを配置するなど、観光需要や長距離移動も視野に入れた車内づくりが行われ、通勤車両一辺倒だった西武鉄道に新たなスタイルを取り入れました。ライオンズカラーの帯に白地という塗装にもそれが表れています。
現在はワンマン化改造も施され、飯能〜西武秩父のローカル輸送は都市型ワンマンで運行されています。また、毎日秩父鉄道にも乗り入れており、原則として池袋までの直通列車は同系が担っています。
(取材・撮影  西武鉄道秩父線・西武秩父/秩父鉄道・秩父)

 

 

 


車内全景からご覧頂きます。大きく伸びた側窓に青のクロスシート。この組み合わせは従来の西武車ではまず見られなかったもので、それだけこの形式にかける意気込みは強かったのでしょう。2ドアでドア〜ドア間はセミクロスシート、車端部はロングシートで芝桜などの行楽シーズンの対応もしっかりとられています。
今でこそ寒色系の座席モケットを用いた車内は通勤車でも増えてきましたが、この当時寒色系のモケットを用いた車内は「レオライナー」8500系と「レッドアロー」5000系のモケット変更車程度でした。自然とこの車両に求めていた立ち位置がわかってきそうですが、快速急行などでふと所沢あたりで乗り込んだ方にとっては「いつもの池袋線じゃない!」と驚かれた事でしょう。


乗務員室との仕切りです。戸袋窓との関係で乗務員室の手前に2人掛けロングシートが設けられています。巧みな配置のおかげもあってこの区画が優先席に指定される事は無いので、飯能方、西武秩父方ともに同じ構成でまとめられています。
2000系では仕切り窓は左右共に同じ大きさでしたが、4000系では片方を小さく、もう片方を大きくしています。

なお、都市型ワンマン運転のため運賃箱や運賃表示器などはありません。仕切り扉と客席部分の間のわずかな窪みから出てきそうな気もしますが(^^;; 4両編成でそれをやったら収拾つきません。

 
中間車および西武秩父方先頭車の車端部です。左の画像は中間車のみに設けられた通常モケットの車端部です。右の画像は先頭車でも用いられている優先席のモケットです。黄色い吊革は近年取り替えられたものですが、他と合わせて丸い取っ手の物を引き続き使用しています。
ワンマン化でバケットシートに交換したロングシートが両側に展開しますが、西武鉄道としては珍しく妻窓がありません。通勤電車では新型30000系が登場するまで妻窓があったので、この車両の妻窓無しは異例中の異例と言っても過言ではないでしょう。広告枠から想像するに、当初は車端部にもクロスシートを設ける計画があったのでしょうか??


飯能方先頭車の車端部は101系時代にはなかった待望の?!トイレと車椅子スペースがついています。また、優先席も2席分設けてあります。吊革で見る限りでは原則として車端部は全て優先席スペースとして、携帯電話の電源はオフにするよう扱われています。
この区画の車椅子スペースはかなり広めにとってありますが、元々ここにはコカコーラの自動販売機が設置されていました。料金不要の列車の中で自動販売機というのは公衆電話並にレアな設備で、上下合わせて8種類ほどの缶が売られていました。さすがにメンテナンスやコストと言った問題があったのでしょう、ワンマン化とともに撤去されています。


ということで、その車椅子スペースです。戸袋窓の先に自動販売機が設置されていました。今は謎の小さな窓が開けられ、握り棒が設置されています。半自動ドアを備えているとはいえ、ヒーターが無いのはちょっと気になります。
また、これまた謎の出っ張りがあります。輪をかけてこの空間の殺風景っぷりを演じていますが、きっと出っ張りの隣に自動販売機があった時には何ら疑問を持たない、自動販売機の出っ張りと同じサイズの機器室だったのでしょう。


使用灯のデザインがちょっと時代を感じさせるトイレ周りです。中は和式です。
製造当初から変わらない姿、バリアフリートイレではありません。貫通扉は「カチャ」とドアノブを引っかけてドアを閉める形状ではないだけに、トイレの「カチャ」と引っかけてからロックするドアノブはここのみの存在。ロック防止にもさりげなく一役買っている事でしょう。


天井周りです。冷房の吹き出し口は2000系にも見られるタイプですが、その両隣のカバーつき蛍光灯やロングシート部分のみの吊革がこの車両の役割をやんわりと表しています。カバーつきの蛍光灯はまず通勤電車では見ませんですし、吊り広告の金具はこの車両ではまず見ません。
車内2箇所にある白と黒の謎の箱はあやしいビームを発する…ものではありません。監視カメラです。土曜日の乗車だったのでマナーの程は不明ですが、「監視中」の文字を入れてもいいかもしれません。


床は西武鉄道ではすっかりお馴染み、ベージュ1色で決めています。


ドア周りです。物々しい囲いに路線図の小ささがやたら目立ちますが、さらに小さく、さりげなく半自動ドアのボタンも備わっています。料金不要の列車を担う車両では今や6000系や20000系などで当たり前となっていますが、ドア部分に化粧板を貼ったのもこの4000系からでした。
 
電卓のボタンのように小さな車内側のボタンが残念な半自動ドアのボタンになります。かつて東飯能で乗り換える事ができたJRキハ38形のドアスイッチに似た形状で、その当時の汎用品だったのかもしれませんが、同時期に製造された211系の半自動ドアスイッチがその後ロングセラーとなり、このタイプのものはレアモノと化してしまいました。


この車内の雰囲気を決定づける物がこの縦に大きく伸びた窓です。ちょっと桟が目立ちますが、個々にカーテンが設けられているのも嬉しい配慮です。座る人のみならず立っている人にも風景を愉しめるように配慮されたのでしょうか、細長いテーブル共々行楽列車としての演出は万全です。

 
座席はロングシートから見ていきます。車端部の5人掛けからです。この5人掛けのみ座面がバケットシートに変更になっています。左の画像の青いモケットが通常の物、右の画像の銀色モケットが優先席になります。
4000系といえばもう一つ、袖仕切りの形状が化粧板つきのものを採用しています。これも6000系へと受け継がれていますが製造当初は画期的な印象で迎えられた事でしょう。

その袖仕切りです。6000系になってさらに内側にモケットが貼られる事になりますが、4000系では化粧板のみに留めています。戸袋窓に接しないようにという配慮でしょうか、上の握り棒はドア側に斜めに膨らむ形で設けられていますが、これがまた座る方の圧迫感を低減しています。

 
2人掛けです。左の画像は通常モケットで乗務員室背後の座席、右の画像は優先席のモケットでトイレ隣の座席になります。5人掛けはバケットタイプだった座面は通常のバネが入ったタイプになっています。確かにこの人数だったら2人掛け!と目で見て判断できるので、必要最低限のみの更新は納得できます。
個人的にはこちらのロングシートの方がお気に入りですが、この車両に限って言えば混んでいなければまずクロスシートに座ってしまいそうです。

 
ドアとクロスシートの間にある2人掛けのロングシートも座面はバケット化されていません。ここではクロスシート部分も合わせてドア〜ドア間の座席の全体像をご覧頂きます。
端の2人掛けの座席は他の部分と同じ造りですが、隣が背の低いクロスシートの背面にあたるので、周りのそびえ立つ感覚はこの2人掛けが一番少ないと思われます。
クロスシートはドア〜ドア間に4人1組で左右5組ずつ。背面の形状はシンプルで、一面化粧板で覆うスタイルは袖仕切りの意匠と同じ物を感じます。

 
クロスシートです。左の画像が端の席、右の画像がそれ以外の4人1組にまとめられた席になります。
実にしっかりした造りで、フレームには骨太な印象さえ漂わせています。「見た目よりも中身で勝負」が西武の座席の真骨頂。まずシートピッチと窓側の肘掛けで余裕をアピール。さらにロングシートにはなかった背もたれの縫いつけ。1人分を明確に示す事によってボックス席にありがちな「1人で4席分占拠」してしまう座り方を座り心地を崩すことなく防いでいます。
そしてヘッドレストに相当する頭上にある膨らみ。フレームに頭をぶつけてもこれなら大丈夫。肘掛けの形状がウェストポーチなど紐の長いバックに引っかけそうになるという心配はありますが、座る人を選ばないという点ではなかなか完成度の高いクロスシートだと思います。

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