近江鉄道  700系[あかね号]
 
  近江鉄道と言えば西武鉄道の譲渡車が多数在籍しているイメージと、トンデモナイ改造をした車両が走っているイメージがそれぞれ思い浮かぶと思います。後者で言えば単行ワンマンカーの220形あたりが真っ先に該当しますが、この車両もそのイメージに合致するのではないでしょうか。700系「あかね号」です。
創業100周年を記念して1998年に作られたこの車両は下回りやドアなど使えるところはトコトン再利用しつつ、再利用したとは思えないほど斬新な外観を手に入れ、利用客からも「普段の車両とは趣が全く違う」と驚きを以て迎えられた経緯があります。
2両1組ですが、800系と同じ運用に入っているためまさに神出鬼没の状態。恋人の如くすれ違いの続く方もおられるのでは?
(取材・撮影 近江鉄道本線・貴生川)

 

 

 


車内全景からご覧頂きます。この通り従来の近江鉄道の車両には見られなかった景観がこの通り広がっています。
3ドア・ドア〜ドア間転換クロスシート、車端部ロングシートという組み合わせこそ関西という土壌を考えると平凡に見えるかもしれませんが、さらりとロングシート車からの改造という経緯を見ると「快挙!」と呼ばずにはいられません。
あ、化粧板のクリームが濃いめだったり、側ドアが重たそうに見えるあたりはご愛敬です(^^;;; この濃いめの味付けと吊革が目立たない点はプレミアな気分をより一層高めてくれそうです。


先に車端部をご覧頂きます。2両とも同じ構成で、片側にロングシートと車椅子スペースを、右側に転換クロスシートを備えます。また、各車両とも前後のドアには吊革が備わっていますが、ロングシート部分や車椅子スペースには吊革はありません。
貫通扉はなく、妻窓が設けられており、陽が差すと非常に暖かい空間になります。その妻窓越しに屋根からの配管が見える点は種車そのままですが、当然外観と同じクリーム色に塗られています。


車椅子スペースです。車椅子マークが丸く切り取られているのはちょっと珍しいのではないでしょうか。
握り棒は短めの物が設置されており、それ以外の設備は特にありません。逆に網棚はロングシート部分もなく、車椅子スペースのとばっちりを受けた格好になってしまっています。
非常通報機なんて贅沢な事は言いません、ちょっとした握り棒をもう一本足したり、殺風景な戸袋部分に沿線ガイドマップを貼ったりするのはいかがでしょうか?


ちょっと蛍光灯の色合いがヘンですが…乗務員室との仕切りはこの通り、種車の仕切りを活かして眺望も兼ね備えたスペースになっています。よく見ると禁煙マークも丸いですね(^^;;;
画像向かって左側に運賃箱があり、ど真ん中には運賃表示器も備わっています。そして車椅子スペースになかった非常通報機が表示器の隣、かなり高い位置にあります。


天井です。元々平天井でしたが、そこにカバーつきの蛍光灯が備わる事で通勤車離れしている印象がより強まっています。冷房の吹き出し口などは通勤電車仕様なので、吹き出し口が均等についています。それはやむを得ないことですが、座席によっては必要以上に寒い!と思う事があるかもしれません。窓側に座ってみると幾分軽減されると思います。


床はクロスシート設置に伴い完全リニューアル。
グレーの床が多い中、明るいベージュはこの車両の雰囲気を決定づけているのではないでしょうか。

 
ドア周りです。ドアそのものは他の車両と同じ物を使用していますが、鴨居部は大きなものに交換されています。その割に広告枠が横長で、妙なバランス感覚に仕上がっています。
右の画像は車両中央部分のドアで、ワンマン運転時は主要駅以外は開きません。こちらは広告枠も吊革もなく、なかなかスッキリした佇まいになっています。
真ん中のドアには何か化粧板を貼ってあげても良かったかなぁ…なんて思います。


側窓は1段下降窓が3連。窓枠とシートピッチがあっていない点は残念ですが、スッキリとした一段下降窓は窓の縁が水平で、ちょっとした飲み物ぐらいだったら置くこともできます。

 
座席です。先に単品から探ってみます。W17転換クロスシートを採用しており、型番の記されたプレートもわかりやすい位置にあります。日本リクライニングシート(株)のキツキツ表記をぜひご堪能頂きたいところです。
改造年から推測するとJR東日本185系から流用した物ではないでしょうか。モケットやヘッドレストカバーは交換したものの手すりや肘掛けなどの形状はそのまま。今では少し重たい印象が否めませんが、座り心地は上々をキープ。ロングシートとは全く違った気分で移動できます。


ドア〜ドア間転換クロスシートの背面です。元々W17転換クロスシートは「端の席」がなかったため、無理矢理化粧板をつけ、転換機構をロックした席が端にスタンバイ。端の席だからといって他の席と座り心地が違う!ということはありません。
その化粧板に整理券発行機までつけてしまうところが凄いです(^^;;;


車端部の転換クロスシートはこのように一枚窓、たっぷりとした足元空間が広がっています。
この画像だけ見ればちょっとしたスタジオセットにも見えてしまいそうです(^^;; 一番車端部よりの席は背もたれの転換が可能で、4人1組にセットすれば空いた妻面とのスペースに輪行袋に入れたクロスバイクなどを置くのに良さそうです。


しかし、こうして一番車端部よりの転換クロスシートを切り取ると…ポツンとした寂しい印象です。


その対面にはロングシートが設置されていますが、なななななんと袖仕切りに転換クロスシートの肘掛けをそのまま利用しています。車椅子スペースや側窓との関係でこの上ない適材適所ではありますが、転換クロスシートの肘掛けとして見慣れた手前、かなり違和感を覚えてしまいます。

見所満載、くつろぎ空間の「あかね号」。ぜひ近江鉄道ご乗車の際には探してみて下さい。

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