名古屋鉄道  美濃町線モ870形
 
  名鉄っぽさをあまり感じさせない曲線美は晩年も健在でした。1976年に札幌からやってきた870形です。赤一色に染まった後も随時改造工事を経ており、当初は大きかった側窓が小さくなった代わりに、冷房も搭載され、複電圧対応として各務ヶ原線にも乗り入れられるようになり、ワンマン化の改造も行われました。屋根の上が重たいくらい賑わっているのはこれらの改造の成果だと言えそうです。本当に重たそうですが(^^;
今後の活躍も十分期待できたものの、2005年限りで岐阜の市内電車が全て廃線となり、連接車という構造や車齢、少数編成のみの在籍であることから再び転籍…はできませんでした。
連接車では無いものの、まだ北海道の札幌ではこの顔にそっくりの車両が走っていることから、札幌で岐阜を懐かしむ方も中にはいらっしゃるかもしれません・・・。
(取材・撮影 名鉄各務ヶ原/美濃町線・新岐阜/日野橋)

 

 

 


車内全景です。路面電車は縦長の車内空間故に、何かと窓が目立って開放的な雰囲気が多いのですが、この車両もご多分に漏れず開放感に溢れる車内になっています。冷房改造前はもっと窓のサイズが大きかったとのことで、もはや想像すらつきません(^^;;
2ドアオールロングシートで、ドア〜ドア間に5人掛けの座席が、ドア〜車端部には8人掛けの座席がスタンバイ。端から端まで左右対称の構成になっています。


車端部は連接車体ということもあり、丸い床が設けられています。名鉄は870形の導入後も連接車を入れた経緯があり、その際も丸い床の車端部を作っています。結構お気に入りだったのかもしれません(^^;;
870形の車端部は前後の車両のつながりをかなり意識したワンマン運転のお手本のような車端部になっていますが、カクカクした雰囲気は外観との釣り合いが今ひとつ取れていません。このあたりを880形の鍵穴貫通路のような「名鉄流」に仕立て上げられないところがちょっぴり残念です。


乗務員スペースの背後です。870形は先頭部分を中央に絞っており、真ん中に運転士が座れるようになっています。絞っている分かなり狭そうなスペースに見えますが、逆にどんな機器でも手を伸ばせば届くという利点もありそうです。
その乗務員スペースとの仕切りには真新しそうな運賃表示器と運賃箱があります。実際使ってみた際にはさほど問題はなかったのですが、画像でこうやってヌボーっと見ると狭そうに見えます。もしかしたらワンマン運転はこの車両にとって「想定外」な出来事だったのかもしれません。


天井です。一段低い中央部にはラインデリアが走っており、その周りに吊革がある格好です。ラインデリアの存在がいかにも「最近冷房載せました!」というのをアピールしているように感じます。ただ、蛍光灯が思いっきり外側に、さぞ脇役かのように設けられているのが気になります。夜乗ったことは無いのですが、果たして適度な明るさは得られたのでしょうか…。


床は一部を除いてアイボリーとベージュのきれいな柄に張り替えられていました。連接部分も同じ柄なのに、その前後はグレーの床・・・一つの柄に統一すればスッキリした見栄えになるのに(^^;;
でも、狭い路面電車の車内でフットラインを設けるのはグッドなアイデアかもしれません。

 
ドア周りです。いつもはドアも見ていて、アイボリーのドアも魅力があるにはあるのですが、今回はドア付近の空間を見ていこうと思います。
左の画像が「入口」のドアです。車内中央部に2箇所あり、大きなドアとスッキリ車内に入れるような空間になっています。それに対して右の画像は「出口」のドアになります。もう降りる時は足元の余裕がほとんど見られません。ドア幅もかなり狭くなっており、これぞ路面電車!なんてロマンを抱く自分とは裏腹に(^^; 降りるのに思わずオロオロした方も多いかと思います。
どちらも段差が大きくある関係で、ドアのすぐ脇の握り棒はかなり下まで伸びています。


側窓です。小さくなったとは言うものの、かなり目立つ存在であることには変わりありませんでした。一部の窓が開閉窓になって名鉄っぽくない、無骨なイメージもありますが、カーテンという最高の演出がその無骨さをかき消しているような気がします。
・・・にしても、窓が大きかった頃の870形に乗ってみたかったなぁ。


座席は2種類、まずは先頭部分の5人掛けからです。
一応1席ずつに分けられた座席が用いられていますが、880形のように明確に分かれているわけではなく、空いていれば隣の席にまたがって座ることも可能でした。
袖仕切りが手前と奥で異なりますが、奥の袖仕切りはちょっとレトロな雰囲気がでていますね(^^;


そして背もたれが2色に分かれている車端部にかけての8人掛けの座席になります。
背もたれの紺色のモケットは優先席を表すもので、各車両8席ずつ設けられていました。それ以外は茶色のモケットで、晩年は名鉄の他の路面電車の形式でも見られたモケットでした。

座り心地は座面の奥行きも狭く、背もたれも切り立ったものでしたが、数十分ほどの乗車時間であれば問題無い感じでした。むしろ他の方にとっては迷惑だったかもしれませんが、唸る低いモーター音、激しく揺れる吊革、普段の電車では味わえない鋭い停車など、連接車という大柄の車両で路面電車気分が味わえたことが楽しかったです。


モ870形、最後の画像はまだまだ鮮やかなオレンジを保っていた整理券発行機です。
LRTが日本でも時々話題になる中で、この路線の廃止、そして緩やかな和みムードを作っていたこの車両が終焉を迎えたということは少々勿体ないなぁと思ってしまいます。そう言って路線や車両が蘇るわけではないのですが、つい・・・

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