名古屋鉄道  6500系
 
  1984年から1992年にかけて製造された名鉄の通勤電車が6500系になります。6000系9次車から採用された非貫通型の前面が大きな特徴となっており、ブラックフェイスが全国的に流行する中での銀色の表情に「鉄仮面」として呼ばれることもしばしばあるとか・・・。
現在も多種多様な路線、多種多様な種別で活躍していますが、瀬戸線や豊橋駅には入線していません。また、ロングシート化された車両の多い6000系とは異なり、車内設備に大きな変更はありません。今回はその中から「4次車」と呼ばれる、セミバケットシートを採用し、窓の増設や後期増備車のような前面のデザインを変更していない車両の車内を取り上げていこうと思います。

(取材・撮影 名鉄豊川線・豊川稲荷駅)

 

 

 


車内全景です。3ドアセミクロスシートで、クロスシートはドア〜ドア間のみ、集団離反形とよばれる構成になっています。車端部や中央のドア周りはロングシートを用いています。
名鉄は昔から「通勤車におけるクロスシートとロングシートの共存」について探っているような気がしてなりません。車やJRとの競争に勝るためには通勤車をもハイクオリティで作るという意気込みが必要不可欠だったからで、この6500系においても落ち着いた車内の根底にはその流れがあると思います。はて、このころの勢いはどこへ行ってしまったのでしょうか(^^;;


先に乗務員室との仕切りです。こちらは至ってシンプルな作りになっており、前面も非貫通型であるため、乗務員室への扉も若干助手席側に偏った作りになっています。その隣には温度計やプレート類が賑やかに並んでおり、あの独特の数字も見え隠れしています。

側面も広告枠や鏡など賑やかに並んでいますが、後年の増備ではこの部分に小さな側窓を設けた車両も登場しています。

 
一方コントラストの激しさが際だつ車端部です。西日が強烈に入っている右側の画像が優先席を備えた車端部になります。背もたれと側窓のステッカーぐらいしか差がないので、さほど違いはありません。
トコトン木目調を用いている姿に驚きますが、昭和50年代に「東海ライナー」として投入された国鉄117系や名鉄の「パノラマDX」でも木目調の化粧板が車端部に用いられており、この地方ではちょっとしたブームだったのかもしれません。さすがに20年も経つと「時代を感じるな〜」という感想を持ってしまいますが、この空間にもたらす落ち着いた雰囲気は今も健在、赤で強烈な名鉄電車のイメージをザックリ和らいでくれそうな感じです。


天井です。横一線にラインデリアが並び、その両脇を吊革が天井から垂れ下がった姿が印象的です。整然とした雰囲気は中吊り広告がラインデリアの両端に追いやられた区画が多いことも原因として上がりそうです。

蛍光灯は剥き出しの物を使用しています。デザイン性を考えるとちょっと物足りなさを感じます。


床も強烈です。座席が設置してある部分は灰色、それ以外、ドア周りを赤く塗り、ドア部分とそれ以外でくっきり色分けしています。全国津々浦々色々な車内をこれまで見てきましたが、ドア周りの部分で色分けというのはなかなかお目にかかれないと思います。何を意識してこのような塗り分けを行ったのか、興味が沸くところでもあります。

まさか世界デザイン博を意識・・・してませんよね(^^;;;


ドア周りです。白い化粧板で覆われたドア周り、吊革のみならず握り棒が天井付近に設けてあり、案外掴まる物は豊富に揃っています。一方、ドア脇の握り棒はちょっと高さが足りないかな・・・という具合になっています。
周りとの違和感は全然無いのですが、1984年生まれの車両としてはちょっと窓ガラスの支持方法や形状にそれ以上の古さを感じずにはいられません。


側窓は一段下降窓が3つ。故にせっかくのクロスシートなのに眺望に難あり席が出来てしまっているのが残念です。また、クロスシートだからと言って窓付近にテーブルがあるわけではありません。通勤電車としての割り切りが感じられます。

 
独特の形状を感じるクロスシートから座席を見ていきます。形状をご覧の通り固定クロスシートになっており、車内にあるクロスシートのうち半分は強制的に進行方向と逆の向きに座ることになります。その形状で転換クロスシートだったら目から鱗だったのですが、それはやりすぎですね(^^;;
背面は木目調の化粧板をふんだんに使われており、ここも落ち着きアピールです。


クロスシートを縦から眺めています。この区画、足は伸ばせますが眺望はあまり期待できません。
他の区画は足は伸ばすことができず、眺望も微妙という感じになってしまっているだけに、「座る」以外の部分を考えるとちょっと中途半端さが出てしまっている点は否めないと思います。意欲的な挑戦だけに、実に残念です。

座席そのものも幅が狭いかな・・・と思います。ただ、やんわりと握り棒も兼ねたフレームの作りは秀逸だと思います。やはりデザイン性に富んだ通勤電車なんだなぁと感心してしまいます。


ロングシート、まずは中央ドア付近の3人掛けから。ここにクロスシートを置いてしまうと乗降時の流れに支障をきたすため、ロングシートを設置しています。
京王7000系などでも見られる着席区分を分けるセミバケットを採用しています。そのせいでしょうか、心なしか一人あたりの座席幅がクロスシートと同様に狭いように見えます。

袖仕切りはクロスシート面は肘掛けとしても機能する弧を描いた物を使用しています。肘掛けとしてはちょっと低い位置ですが、ただの「壁」で処理が終わってしまう事が多い部分において堂々仕切りを設けたことは賞賛に値すると思います。

 
車端部の5人掛けロングシートです。こちらは若干余裕を感じられない雰囲気に仕上がっています。
右の画像は優先席の区画で、ドア側二席分の背もたれが紺色になっており、その部分が優先席であることを示しています。その背もたれも含めてセミバケット形状となっています。しっかりとした座り心地で、空いていれば足元が広い分クロスシートとどちらに座ろうか迷ってしまいそうな気がします。

 
最後に乗務員室の仕切りそばにある2人掛けのロングシートです。右の画像が豊川稲荷方先頭車にある2人掛けロングシートで、優先席の指定を受けています。ここのコンパクトさはクロスシートよりも顕著に感じられますが、これも壁で二方向囲まれているからでしょうか・・・(^^;;;


自分がこの車両のデザインの中で一番疑問に思うのがこの袖仕切りの形状です。
なぜ短冊のような仕切りになったのでしょうか、立客との干渉にも不十分ですし、何よりも空いた部分から風が入り込むわけで、位置的に肘掛けとしても使いづらそうです。
さてはクロスシートの仕切りと形状を揃えたかったのでしょうか。それとも世界デザイン博向けに木目調化粧板を大アピールしたかったのでしょうか。座った方に「どうだーこの木目調の仕切り!落ち着ける深い色合いでお値段なんと・・・!!」


なお、90年代以降に設計された名鉄の新車はいくつも登場しましたが、
「木目調」を大々的に使った車両は現れていません。

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