名古屋鉄道  5700系
 
  2ドア一般車で助手席側の大きな窓に特徴があった名鉄5700系です。昭和61年に登場した時は豊橋〜岐阜間などの急行運用に投入され、大いに将来を期待されたはずだったのですが…私が名鉄に乗り始めた頃にはすっかり普通列車運用が板につき、気が付けば2ドア一般車最後の系列として、5300系共々少数派になってしまいました。
2019年に全車廃車になってしまいましたが、5700系に関しては見た目まだまだ走れそうな感じがしていただけに、他私鉄の譲渡がなかったのがかえって意外な感じでした。
今回は2009年と2015年に取材した模様を混ぜながらお届けします。6両編成から4両編成にした先頭車改造車にはついに会えませんでしたが、それでもあの先頭部分に会えた時のプチ興奮、特に転換クロスシートの微妙な幅の「?」は、今でも鮮明に覚えています。
(取材・撮影 名古屋鉄道犬山線・犬山 他)

 

 

 


車内全景です。画像は中間車の全景で、ドア〜ドア間は転換クロスシートが整然と並び、車端部にはロングシートが展開しています。2ドアで補助席こそありますが、ドア周りの空間の余裕を確保している点はいかにも名鉄らしいなぁと思います。つり革はそのドア周りから車端部に向けて設置されています。
床の塗り分けから察するに、外観同様一般車としての体裁を保とうと思っているのでしょう。しかしドア〜ドア間の転換クロスシートが整然と並ぶ姿は迷うことなくちょっと背筋が伸びそうな、ちょっぴりよそ行きの装い、しかし2ドアクロスシートの系譜をしっかり受け継いでいます。


先頭車、乗務員室との仕切りは左右2列ずつ転換クロスシートをスタンバイ。
助手席部分の窓、そして扉の窓が大きくとられています。パノラマカーほどではないにせよ前面展望が愉しめる配慮がなされており、特に助手席側の機器配置を眺望優先で窓の下に全部収め、反射を抑えた塗装を施した逸話は名鉄で語り継いでいただきたいくらいです。その前面展望を考慮してちょっと幅の長い座席を置いている点…もう完璧!です。

それでも眺望が効く車両としてクローズアップされることが少なかったのは、きっとパノラマカー、パノラマDX、パノラマスーパーと展望を前面に押し出した車両が幅を利かせていたせいかもしれません。

 
車端部です。あまり妻窓が無い名鉄一般車、ご多分に漏れずこの形式も妻面は広告枠、扉の窓も小さくなかなか閉鎖的な妻面になっています。その手前はロングシートで、優先席を背もたれのモケットの色を変えて区分していることが右の画像からも伺えます。晩年はこの優先席区画の吊革の取っ手部分が黄色になっていました。遠目から見ればわかりやすいものの、ドア〜ドア間の荷棚の装飾も黄色で、区別がついているようなついていないような…。
ロングシート部分の荷棚は握り棒も兼ねていて、思えばドア周りにも握り棒が…結構立客に対する配慮が目立つ車端部で、ドア〜ドア間の立客向けの取っ手とはだいぶ様子が違います(^^;; このあたりの割り切りもちょっと懐かしくなりました。


天井です。中央にどどんとラインフローファン、そして名鉄名物の天井に直接設置された吊革はこの形式でも健在、さらに両側にはカバーつきの蛍光灯が車内を照らしています。見るからに落ち着いた構成です。
あ、中吊り広告の配置に違和感を覚えるのは他の名鉄形式でもよくあることです。


床です。ベージュと赤色のツートンカラーで、この床で思い浮かべるのは鶴舞線直通の100系でしょうか。5700系では通路を赤に塗って周りのベージュとの差別化を図っていますが、ドア周りを赤く塗った6800系よりも無難な色の塗り分けを採用しています。


ドア周りです。立席スペースを広く確保したこともあり、ドア周りの空間に余裕が感じられます。ロングシートもおおよそ広告枠の部分を立席として充てられています。点在するのは消火器、非常通報機、そして赤い囲みが目立つドアコックです。この空間を活かせるようにL字型の手すりを配置していますが、この形状はなかなあ珍しいものがあります。これだけ空間を取って、かつ幅を1400mm確保した両開き扉は心なしか見慣れた通勤電車よりも少し幅が広いように感じます。
ドアそのものは灰色のゴムが目立つ両開きで、名鉄らしく鴨居部にカーブが入っています。

なお、ドアを紹介したからというわけではないですが、「2扉車では駄目か?」とつぶやきたい今日この頃です。


転換クロスシート部分の窓周りです。連続窓で横引カーテン…ここだけみると特別車のような装いに心がトキめいてしまいそうです。先頭車は3枚、中間車は4枚が連なっています。先頭車改造車は…結局乗れずじまいになってしまいました。

 
車端部は5人掛けのロングシートです。優先席は背もたれのモケットを変えています。
名鉄らしい割り切りが特に印象に残る形状で、白帯車のソファーかと思わせるようなロングシートを期待して乗るとその小さい感じに肩透かしを食らったような気持ちになります(^^;;
1人ずつ割り当てがありますが、ちょっと狭いかなぁという印象。そして背もたれはペタッとしています。奥までしっかり腰かけている様子がどうも伺えないような感じがしますが、長い時間乗る方は転換クロスシートで寛いでください、というサインだったのでしょうか。

登場時は赤いモケットだったそうで、その時代の車内も見てみたかったものです。


中間車の転換クロスシートの衝立、そして補助いすをご覧いただきます。この5700系は全席転換クロスシートで、元々の先頭車は左右各6列、中間車や先頭改造車は左右各8列備えていました。先頭改造車は代わりに乗務員室背後の座席がありませんでした。
補助いすはこの取っ手を手前に引き出すと座面と背もたれ、ひじ掛けが出てきました。出てきてしっかり固定できた記憶があるのですが、手元に1枚もないのは偶然か、悲劇か…。1380系の補助席も大雑把に見れば同じような形状ですが、座面裏のカバーや蹴込み板の意匠など、細かいところが異なります。


転換クロスシートです。背もたれの取っ手の形状やひじ掛けが名鉄っぽさ全開…かと思いきや、なぜか類似品をあまり見かけない座席です。既視感はあるんですけどね…こちらももともとは赤いモケットでした。
足元の白い蹴込み板が埋まっているのが難点だったものの、あまり形状に工夫を施されたとは言い難い背もたれとほどよく柔らかい座面の組み合わせは特段印象に残らない、可もなく不可もなく…といった座り心地でした。

 
乗務員室背後の2列はちょっと特別な転換クロスシートです。特にこの仕切り…!ドアコックの関係があるのかもしれませんが、この仕切りは果たして仕切りと呼んで良いのやら…と迷ってしまいます。それでも仕切りが無い転換クロスシートが多かった名鉄では案外特別な存在だったのかもしれません。誰ですか、背の低い人が座ると目隠しになるとか、ちょっと声を変えたくなるとか言っている人は?!

 
わかりにくくてすみません。助手席側の転換クロスシートは親子連れで座れるようにと座席幅を雑誌記事の数値で1085mmとして、通常の950mm幅から13.5cm広げています。また、左の画像1列目の背もたれは他の座席よりも若干低めに設定、景色を良く見えるような配慮がされています。幅についてはなんとなく気が付くものですが、背もたれについては本当に僅かながらの差で、一目見ただけではなかなか気が付かないものでした。
後年JR九州で親子で座る座席を搭載した観光列車がデビューしましたが、こちらは街乗りにちょっと工夫を施したアイデア大賞もの。なんと言っても座る人を選ばない、さりげない心配りに感動です。
なお、背もたれが低くてもあまり座り心地には影響しなかった記憶があります。


名鉄のお約束と言えばコレ。
引退間近の雑誌の特集で「3ドア車改造計画」があった!ということに驚いている一方で、2ドアクロスシートの空間の使い方が秀逸だっただけに、やはり私の頭の中では譲渡された5700系の姿がグルグル回っています…。
 
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