くま川鉄道  KT500形[田園シンフォニー「春」登場時]
 
  くま川鉄道の主力車両KT500形は5両それぞれに四季を割り振って「田園シンフォニー」という愛称をひっさげて登場しました。デザインはKUMA-1、KUMA-2に引き続き水戸岡鋭治さん率いるドーンデザイン事務所です。
登場時はこの5両を観光の切り札にした格好で、人吉温泉駅の売店にも田園シンフォニーのグッズを多数販売する力の入れようでした。(これがまた素敵なデザインでつい買ってしまうのです…。)
2014年に登場し、取材したのが2015年、それから月日が経ち2019年、なんと全5両に対してロングシート化が行われるという大胆な報道…。後日見たインターネット記事では「サイクルツーリズム」とか「通勤通学需要」という言葉が並んでいましたが、増備早々の判断に唖然としたものです。
このコンテンツではセミクロスシートだった登場時の模様をへたくそなヴァイオリンのような演奏でお届けします。
(取材・撮影 くま川鉄道湯前線・人吉温泉〜湯前)

 

 

 

 
車内全景です。左の画像は湯前方から撮影したもので、右の画像は反対側の人吉温泉方から撮影したものです。
新車ということもあり水戸岡先生のデザインも白と木の美しさが見事で、心地よい軽快なクラシックが聞こえてきそうです。一方、クロスシートをロングシートに変更したということは立席スペースの確保が念頭にあるはずですが、確かに展示ケースや衝立が壁になってしまったり、吊革が無い区画が中央部に展開したりするなど、通学客が奥に入っていく見せ方がもう一歩だったのかなぁと思うところです。
現に取材時も夕方ラッシュで途中駅から高校生が大挙して乗ってきましたが、クロスシート席が埋まるとドア近辺に滞留してしまいました。それでも、その時は抜本的な見直しを行う事態になっていたとは思いもしませんでした…。

 
湯前方の車端部です。半室構造の乗務員室の隣には真っ白の運賃箱、そしてお子様用の展望席。この部分を立席スペースにしている会社が多い中、このように子供に興味・関心を持ってもらえる座席を設置したのはナイスアイデアです。ただ、車掌が窓から顔を出す時にお客さんと干渉しそうな気がしますが…気にしない、気にしない。
ドアと座席の間にはパーテーションがありますが、この車両は半自動ドアではありません。お洒落な意匠ですが、ここに貼ってあるものはマメなメンテナンスが必要になることが多いようです。案の定、レタリングを剥がしたと思われる跡が…。


人吉温泉方はトイレがありますが、そのトイレの手前には冷蔵庫が設置されています。観光列車の時には車内販売基地になるようです。トイレの奥はドア、そして乗務員室と車椅子スペースのコンビになります。座席もカウンター席を設けていますが、トイレの出入りを直接見ないような座席配置は流石ですし、パーテーションで周りと区切られている点はグループには好評だったと思います。ただ、この部分にも吊革はありません。


トイレとその手前の車販基地です。なかなか素敵なスペースになっています。棚の積み上げ方が不自然な理由は窓側にはドアコック(!)、トイレの壁と接する面も蓋が設置されているからです。窓枠を一切無視した窓側のカウンターテーブルがチラッと見えていますが、この割り切りの良さがいかにも水戸岡さんっぽいです。
トイレは大きい空間を確保し、洋式の車椅子対応のものになります。


車椅子スペースは人吉温泉方車端部になります。ここの妻面にもテーブルと手すりを用意しています。連結時でも運賃箱がなかなか引っ込められない分、この手すりは揺れた時に頼りたくなりそうです。
車椅子スペースは手すりと非常用の通報ボタン、車椅子の固定器具を備えています。既成の手すりを設置していますが、ここを吊革と同じような木の素材の手すりにすると、車椅子やベビーカーの方も木のぬくもりを感じやすくなるのではと思います。


天井です。最近の水戸岡さんのデザインは本当に天井が洗練されているように感じますが、この車両の天井も冷房かつ通風孔にかけては既成のものを使用し、照明をダウンライトにしてよりシンプルに魅せています。車掌用のスピーカーが画像にも写っていますが、それとは別に黒いスピーカーも備わっています。
吊革はなぜかプラスチックのハートのものが1つ混ざっていますが、これ、デザイナーさんはOK出したのでしょうか…?もう時効だと思うので、今度こっそり教えてください(^^;


フローリングの床です。ここもなかなか素敵な素材ですが、メンテナンスをマメにしないと後々くたびれるのが明らかにわかってしまいます。「味がある」と「え、ちょっと…」は紙一重です。


ドア周りです。ここも白でまとめています。ゴミ箱もシンプルながら周りの雰囲気にバッチリ合わせてあります。半自動の対応はしていません。
窓のど真ん中に「春」のロゴが貼ってありますが、注意喚起を示すステッカーなどはなく、ごちゃごちゃしていない感じが素敵です。ドアの手前には滑り止めのシートも貼られています。


窓周り、そして荷棚です。この荷棚の意匠は京都丹後鉄道や富士急行でも同じようなものを見かけますが、個人的にシンプルで木の柔らかさを感じる逸品でお気に入りです。
その下の額縁は逆にロールカーテンの引き下ろしがやや不便ですが、いっそのこと額縁にもう少し遊び心があると写真を撮るときに良いフレームになると思うのですが…後年、まさかのロングシート化で額縁の下辺が背もたれで隠れるとは思いもしませんでした。


座席は様々なタイプがありますが、まずは先ほど登場したお子様用の展望席からです。この角度で撮るのが精いっぱい、座席自体は回転しません。撮影時の角度がついてわかりにくくて申し訳ないですが、ハの字状に配置されている点がポイントです。

 
湯前方から座席を紹介していきますが、まずは4人掛けのソファーです。下にはヒーターの他にスロープなども格納されています。テーブル付きとはいえ実質ロングシート、しかしロングシートもこれだけお洒落にできるというのが水戸岡先生の醍醐味だと思います。
この車両の中では背もたれ、座面とも割と安心して座れる座席ですが、テーブルがちょっと大きく、出入りの際の余裕がもう少しあると良かったのに…と思っていたところ、ロングシート化でテーブルが撤去されたとか。それはそれで取っ手がある安心感が活かしきれず、ちょっと残念です。

 
主だった部分はこちらのクロスシートになります。テーブルはパタパタと開閉できます。向かい合わせの4人1組の区画と一方向きの2人掛けの区画が存在し、2人掛けの区画は配置上撮影が難しかった記憶があります。固定テーブルがあると難儀するんです、デブなもので…。
窓側にもひじ掛けがあるのは良心的ですが、座面のクッションが硬く、背もたれは少しよっかかると後ろの席にごっつんこしそうなくらいの柔らかさだったのはビックリしました。また、窓側には配管が通っており、テーブルと配管で足元の狭さは途中駅で乗り降りするのに敬遠したくなりそうな印象でした。また、座席と座席の間にある黒い物体はヒーターですが、いやはやここまで露出しているヒーターも珍しかったのではないでしょうか。
後年のロングシート化ではこの座席の向きを90度変えることになりました。テーブルは撤去です。

 
そして再びソファー席です。特筆したいのが右の画像のパーテーションも兼ねた背もたれの高いソファーです。座面と背もたれの垂直具合で全くくつろげないのはさておき、このモケットの鮮やかさは見事で、なんか絵画を見ているような気分になります。花に囲まれたような…という言葉も用意したのですが、ちょっと違う物を想像してしまったのですぐに撤回します。うっかり政治家みたいですみません。テーブルは左の画像くらいの大きさであれば出入りもしやすくなります。

 
そしてカウンター席です。ここも固定なので出入りの狭さが気になります。また、座席が思ったよりも小ぶりで座面は薄い座布団のようなものなので、あまり長い時間居座ることは想定していないと思われます。また、画像を見てお気づきかと思いますがドア側の端の席は目の前が壁…。観光列車の時にこの席をどう割り振っていたか確認しようと思ったら、観光列車ももう終了してしまったんですね…。ニーズを捉えるのはなかなか難しいものです。


排気筒の部分をうまく活用したショーウインドウ。良く見ると非常用のボタンまで備わっています。このあたりの作り込みはお見事です。次に乗るときにどのような展示になっているかが楽しみです。
 
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