京浜急行電鉄  800形
 
  だるまさんです。なんて書くと可愛く感じるものですが、怒涛の加速にはだるまもぞぞぞーっとコケそうな勢いで、東京西部在住の私としてはこの加速力と片開きドアが一斉に勢いよく開け閉めされる姿に圧倒されたものです。
登場は昭和53年。片開き扉も前照灯の1灯もそれまでの京急の伝統を受け継いだわけですが、どちらもこの800形が最後になってしまいました。普通列車用の運用を黙々とこなす一方、一時期はエアポート急行など優等列車としての活躍も見られました。3両編成から6両編成に改造された編成もあったので、決して順風満帆な人生ではなかったかもしれません。ええ、追い抜かされて追い抜かされて…その辛さ、よくわかります。
今回は812編成、823編成の模様を中心にお届けします。823編成といえば引退時に登場時の塗装に復刻した編成で、遠くから見ても華やかさを感じました。
(取材・撮影 京急本線・横浜〜浦賀)

 

 

 


先頭車の車内全景です。4ドアロングシート、18m車です。登場時に試験で数パターン試したところから始まり、更新工事を経てこのような車内に落ち着いた格好ですが、私のように乗る機会にあまり恵まれない人にとってはこの車内は1000形や更新前の1500形を彷彿とさせる、This is 京急と言いたくなるような内装でした。
先頭車は天井が丸みを帯びており、分散型クーラーが備わっています。

中間車の車内全景です。中間車は天井にダクトを通して集中型クーラーを上に積んでいます。
この組み合わせはまるで国鉄の特急形電車を見ているようですが、天井が違うだけで車内の雰囲気も少し変わってきています。特に中間車の奥行きを感じる仕様は個人的には好きですが、冷房の事を考えると分散型クーラーの真下で涼んでいたい気持ちでした。


乗務員室との仕切りです。大きい仕切り窓が確保されており、これも京急ではすっかりお馴染みの仕様です。前面の窓も大きい2枚窓で、前面展望には申し分ないでしょう。
また、ここの部分に窓が備わっていますが、同様に4ドア車だった700形の3人掛けとは異なり、2人掛けになっています。窓枠も縦長ですが、登場時はなかなか見慣れなかったのではないかと思います。


先頭車の車端部です。車端部はこの系列も折妻になっています。画像で見てもなかなか気が付かないかもしれませんが、妻面に近い場所に座るとデッドスペースの天板が台形になっていたり、窓上の機器箱の影で気が付くかと思います。
優先席は先頭車の他中間車のどちらか一方の車端部が指定されており、隣り合う車両のどちらも優先席になるよう組み合わせています。晩年は吊革も取り換えていました。

 
6両固定編成は編成の中間部に両開きの貫通扉が設置されていました。仕切り扉はこれのみで、運転台を撤去した編成に至ってはついていませんでした(^^;; 今思えば大胆ですが、他の京急の車両に倣った仕様だったのでしょう。
この部分も緩やかな折妻なのですが、開けにくさは全くありませんでした。むしろ両側の戸袋窓を支えるFRPに時代の先端を感じたものです。
右の画像、通常モケットの車端部は中間車、貫通扉無の仕様のみになります。消火器がカバーに入っているのも見えます。改めて見渡すと窓の大きさ、窓の多さに驚きます。700形も同じような窓配置ですが、1段窓になったのでより洗練された印象です。

 
先頭車の天井です。分散型クーラーの出っ張りがポイントです。右の画像は先頭車に備わった扇風機ですが、扇風機も台座を設けています。なかなか出っ張った形状の設置は見なかったので新鮮ですね。
天井に戻ると吊革は線路と平行方向のみの設置で、高さも2段階のみです。丸みを帯びた天井でも荷棚上の広告はかなり窮屈そうで、ドアの鴨居部も狭いです。


中間車の天井です。扇風機が凹んだ部分に設けられている点がポイントで、これだけ天井が下がっているという画像にもなります。吹き出し口、そして吊革と同じ方向に走っているのがなかなか素敵です。蛍光灯は間隔を空けて設置していますが、化粧板の白がそれを補っています。そそ、白と言えばアイボリーの化粧板もなかなか当時は斬新に映ったのではないでしょうか。これまで薄緑色が多勢を占めていたわけですから。


珍しく天井で足踏みしていますが、一部の編成には珍しいこちらが備わっていました。窓が開かない編成を中心に備わっていた排気扇です。ファンデリアのような意匠にドキドキワナワナしますし、時代を感じさせる逸品です。外から見た時に分散型クーラーの間に小さい箱があればその下にこの素敵なカバーが待っているわけですが、動作が静かだったせいか、明確に「動いているなぁ〜」と思ったことがないまま永遠の別れになってしまいました…。


床はグレー一色です。後継の2000形がフラッグシップよろしくコルク柄だったことを思うと質実剛健、良い仕事しています。

 
ドア周りです。晩年はドアステッカーが上下2枚に、ドアの端に黄色いテープと点字が貼られました。このドアの開け閉めの豪快さが800形の醍醐味の一つでしたが、そのドアは無塗装のステンレス、やはり飾り気はありません。その脇の縦長の広告枠、鴨居部の狭さにもご注目ください。
両開扉と比較しても仕方がないのですが、ドア周りに余裕がないのが伺えます。片開き扉なのでドア幅が両開きよりも狭いわけで、ドア周りに立客が出ると乗り降りに支障がでやすかったのかなぁ…と振り返っています。ただ、ドア数はこちらの方が多いのでそのあたりの支障は織り込み済みだったかもしれません。

引退の理由の一つが3ドアに対応したホームドアだったと聞いています。さすがにこればかりはどうにもなりません。無念。


800形では晩年までこちらのステッカーを見る機会が多かったです。見るからに痛そうなこのステッカーもなぜか人気があったようで、私が乗っているミニバンにも正規品を貼りたいくらいです。京急さん、商品化しませんか?(^^;;


窓周りです。2枚の大きな側窓、いやはや単純明快でわかりやすいですが、FRPの枠がさらに軽快さを増しています。
ロールカーテンはついていますが、おりゃぁ!と下してストッパーは一番下だけ、こちらも単純明快です。
荷棚と袖仕切りとの間に握り棒が備わっていますが、こちらは後付けになります。


座席です。6人掛けのロングシートはドア〜ドア間になります。普通列車を主体にしているとはいえ、奥行きをしっかり確保し、ほどよく柔らかく、座面の高さもほどほど良いポジションのロングシート、なかなか良い出来だったのではと思います。700形のような奥行の浅さの消化不良もないですし。3人ずつ区切ったのもグッジョブです。
ただ、4ドア車と3ドア車が入り混じっていたからこそ、着席区分を示すような仕掛けがあっても良かったのかなぁと思いますし、中央部にひじ掛けがあると高加速に驚く一見さんにさらに優しかったかなぁと思います。


乗務員室背後の座席です。2人掛けですが、見た目は少し狭そうです。水入らずのカップルにはもってこいですが、私のようなワイドな人にはちょっと窮屈でした。点検蓋がロングシートギリギリまで迫っていますが、この段差が気になる人は他の席をお勧めします。

 
車端部です。左の画像は通常のモケット、右の画像は優先席の銀モケットです。妻面の余裕が大きなポイントです。
3人掛けですが、6人掛けのドア〜ドア間とともにわかりやすい座席配置でした。あとはどう定員どおり座ってもらうかどうかの仕掛けですが、そのあたりは後継の車両がしっかり励んでいるはずです。
銀のモケットは他の京急の車両でも見られましたが、この車両を最後に営業車では見かけなくなってしまいました。紺モケットもそうですが、通勤形車両は中も外も実質「赤い電車」になりました。


袖仕切りです。この木目の美しさに一目惚れですが、形状も肘掛を中心としているようなもので実に良く考えられています。登場時は傘がかけられませんでしたが、握り棒が追加されてからは傘もかけられるようになりました。今の大型袖仕切りと比べるのは酷なもの、窓枠にも通じる緩やかな丸みを帯びた優しいだるまに、心から乾杯。
 
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