関東鉄道  常総線キハ350形[キハ3518]
 
  関東鉄道常総線というと3ドアの新形車両が浮かびますが、今回はそれよりも前から走っている3ドアのディーゼルカー、キハ350形からキハ3518を取り上げます。
元々国鉄のキハ35系で、1988年から1992年にかけて旧型車両の一掃を目的に関東鉄道に移籍します。3ドアロングシートという通勤需要にマッチした構造がヒットし、関東鉄道常総線のエースとして活躍します。その後新形車両の登場とワンマン化により廃車が進んでいますが、現在も取手〜水海道間を中心に活躍しています。
今回取り上げるキハ3518は元々キハ36という車両で、トイレが元々ついていない片運転台の車両になります。キハ36の製造数自体が少なかったことも災いし、現在は関東鉄道に2両が残るのみとなっています。
(取材・撮影 関東鉄道常総線・取手)

 

 

 


車内全景です。画像で見ると「おや、こりゃ通勤電車だね?」なんて思う方もいらっしゃるかもしれません。実際101系という通勤形電車をモチーフに作られたようで、この3ドアロングシートという車内構成がもたらした開放感がこの車両のウリになります。とはいえ実際に乗ってみると電車のような雰囲気よりもディーゼルカーとしての雰囲気の方が強いかな?なんて思ってしまいます。

関東鉄道に移籍してから手が加えられた部分もありますが、化粧板やドア、窓などは国鉄時代からそのまま。この独特の薄暗さも国鉄クオリティです。


車端部です。キハ35系において、片方しか運転台のついていない形式はキハ35とキハ36の2種類があります。そのうちキハ35はトイレとクロスシートが車端部についており妻窓が塞がれていますが、キハ36はトイレが無いため、妻窓が設けられました。この編成は奥の車両が元キハ35、手前の車内が元キハ36になっているため、とりあえず鉄道車両を作ってみたドラマセットのようなアンバランスな光景が広がってしまっています。とはいえ国鉄時代に作られた片運転台のディーゼルカーにおいて左右両側に妻窓がついているという光景にはあまり出くわした事が無いので、この出会いは新鮮でした。

妻面は薄緑一色。・・・大道具さんのペンキの使いすぎでは決してありません(^^;;;


逆サイドです。こちらも薄緑でまとめています。
側ドア、座席に続いて画像左側に運転席、右側に助手席があります。運転席の部分が出っ張っていますが、助手席部分にも出っ張りが見られるため、近郊型電車のように座席の長さを左右で調節するような事態には至っていません。ただ、左右同じパーツを使ったからでしょうか、画像向かって右側の座席の奥には少し隙間があるのに袖仕切りが設けられていません。

この助手席部分の仕切りですが、車両どうしをつなぐ時には折り畳んで半室を客室にしてしまうこともできます。思いがけない客席スペースの登場で、この構造は通勤形電車よりも近郊形電車でよく見られました。現在も半室構造にできるとは思いますが、いかんせん2編成併結の列車はほとんど皆無のため、見られるのは奇跡に近い形となってしまいました。

 
天井です。元々非冷房で登場し、関東鉄道に移籍した時も非冷房のままだったのですが、その後冷房装置が設置され、天井のみならず屋根にも改良が加えられています。
そのため車内には右の画像のような冷房装置が設けてあります。夏場はものすごいありがたい設備なのですが、とにかく大きな存在感が・・・(^^;; また、網棚のすぐ上にあるのでこの冷房の部分は網棚に荷物が置けません。

扇風機には青いカバーがかけられています。扇風機も見る機会が減ってしまってきていますが、扇風機カバーはもっと見る機会が少なくなっているかもしれません。
 
そんな中一つだけカバーのかかっていない扇風機があったので撮影してみました。中央部分には「JNR」が残っている扇風機になります。車内を見回すとかつては扇風機のスイッチがあったことを思い浮かべさせてくれる「塞ぎ板」が所々で見られます。今は乗務員さんの選択で扇風機の使用が決まるようで、その点では通勤電車に一歩近づいた感じがします。


車内を所々見回して見つけた気になる奥様ここでもう一品。汽車という言葉の響き、文字のスタイルに惹かれます。
勿論この文章が役に立ってしまう日が来ないことを祈るばかりですが、この車両に乗ってみたらぜひこちらもチェックしてみてください。印象、グッと変わるかもしれませんよ(^^;;


床は濃いめの灰色。ここまで濃くしなくてもいい気がする灰色です。ちょっと重たそうな雰囲気です。

 
ドア周りです。普段はドア周りでは内側しかチェックしませんが、今回はドアの外もチェックしてみましょう。すると・・・ドアが車体の外側にあります(^^;; キハ35系では世にも珍しい「外吊り扉」を採用しています。これは車体の強度を確保するために、車体に戸袋分の隙間を設けてそこに収まるようにドアを設けるのではなく、車体の外側にドアを設けるしくみになっています。そのため外観ではドアのレールや普通の扉よりも大きめに作られた扉が目立つようになり、内側からは普段よりも奥まった位置にあるドアや本来なら戸袋部分に相当する部分に開閉窓があるなど、キハ35系の個性をとにかく作り上げているポジションになります。
個人的には車内鴨居部のすぐ下にあるカーブに未だに慣れません(^^;;


さらにこのドア、かつては地面から床までの高さが90cmしかないホームに対応するためにステップと呼ばれる段差があったのですが、もともとその高さよりも高めに作られている関鉄のホームではステップが隙間になってしまうということで、このような緩いスロープに改造されています。乗り降りの際には車内でもつまづくことがないよう、しっかりと足元を確認する必要がありそうですね(^^;;
逆に言うとスロープぎりぎりまで立席スペースが確保されたことになりますが、外吊り扉の宿命でしょうか、隙間風がひどいという話を時折耳にします。


戸袋部分に相当する部分にも開閉窓が設けられていますが、製造時より開閉できる幅が他の窓よりも狭くなるように設定されています。現在では開ける事ができないようになっており、ステッカーでのその案内もしています。確かに開閉時に指が巻き込まれたら大変なことになってしまいますよね・・・。

そして、戸袋の隙間が無い車体をこのような角度から見ると車体の厚みをひしひしと感じることができます。手すりの位置にも要注目です。


座席です。まずはドア〜ドア間の座席から。関東鉄道の他の車両にも見られる蘇芳色のモケット、そして角張って奥行きの浅い座面下を見ているとどことなく取手と下館で顔を合わせていたJR403系を思い浮かべてしまいます(^^;; しかし403系には無い長さで、ここの部分では目測で9人が座れると思います。
座面が浅く背もたれが薄いものの、沈み込みと背もたれの斜め具合はなかなか良いと思います。ただ、気動車故の宿命ではありますが、細かい振動をいささか拾いがちで気になる方は少し落ち着けないかもしれません。


車端部です。ややいっぱいいっぱいな寸法になっているのはドア〜ドア間と同じ。座席のまさに「端」から袖仕切りが出ているあたりに設計時のギリギリ具合が伺えます。座席定員はギリギリ7人掛けといったところでしょうか。
奥の座席がまるで取ってつけたように見えますがそのようなことはないと思います。


乗務員室の仕切りに面した座席もこのようにジャストフィットなスタイル。
先ほど「袖仕切りがあれば・・・」とぼやいた区画ですが、座席の空き具合によっては座席隣、薄緑の排煙管にも寄りかかれるポジションもそこそこくつろげる「当たり席」に加えても良いかもしれません。ただ、混んでくると車端部同様肩の逃げ道が確保しづらくなってしまいます。気動車にはなくてはならない設備だけに「ハイ撤去して座席幅を広げて〜」なんて安易な事ができないので(^^;;実に複雑な気分です。


優先席、この車両は水海道方の車端部にあります。モケットは蘇芳色に対して紫色を使用しています。ベローンと長めに確保してあるわけですが、優先席を示すステッカーが小さい分、ここがどのような意味を持つ席なのか意識している方がどれくらいいらっしゃるのか、気になるところです。


最後に座席の上を。この車両の最大のウリはこの「網」かもしれません(^^;; 網棚とはいいますが棒状の物や板状の物が流行している昨今、この車両は緑色の「網」を使っています(^^;;;

尤もキハ35系においてこのような「網」が使われていたか否かはわからず(^^;意外と触り心地がゴワゴワしていて新品のような装いだったこともあり、映画撮影用に取り換えられたと余計な解釈をしても間違っていないような気がします(^^;;;
東急の「電車とバスの博物館」でお馴染みのベコちゃん(^^;;;;;の車内で同様の網棚を見たことがあるのである程度参考にしていそうな気がしますが、これは完全な思い込みです。ベコちゃん焼きがおいしかった・・・というのも完全な思い込み、いやいやこの記事とは一切関係ないですね(^^;;;;;;

とはいえレトロな雰囲気に一歩近づいたことは確かで、こちらも実際車内でチェックして頂きたい設備です。



〜おまけ〜

隣の車両もある意味すごいことに(^^;;; こちらの取材はまたいずれ・・・

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