JR九州  815系
 
  JR九州のデザインを一手に引き受けるドーンデザイン研究所。水戸岡鋭治さん率いる同事務所が手がける車両は特急形ばかりではありません。今回取り上げる大分・熊本地区の815系というローカル車両もデザインを手がけました。
外観こそ単なる切妻…かと思いきや、芸の細かさ、アルミの銀色を巧みに使い、赤でアクセントを整えた大胆な色彩でこれまでの大人しい通勤電車のイメージを一気に覆しました。置き換えを目の当たりにされた地元の方はどのような気分でこの車両を迎えたのでしょうか。個人的にはこの頃の銀色を駆使した水戸岡ワールドが画期的に写り、格好良いという眼差しで登場時から写真を眺めていました。
現在も大分地区の日豊本線・熊本地区の鹿児島本線・豊肥本線などで活躍しています。
(取材・撮影 JR鹿児島本線/日豊本線・熊本/幸崎)

 

 

 


車内全景からご覧頂きます。3ドアロングシートの車内は…もう使い古された詞かもしれませんが「格好良い」です。裏にはコストをかけないとか、収容力の確保とか、新車を作るにあたって様々な制約があった事でしょう。しかし、それをも忘れさせてしまうほどの格好良さがあります。他の通勤電車ではまず見られない格好良さです。
外面は赤色で攻めていますが、車内は銀色をベースに黄色を効果的に配置しています。リバーシブルです(^^;;;

 
車端部の様子です。左の画像は大分方先頭車の佐伯寄り車端部、右の画像は佐伯方先頭車の大分寄り車端部の模様になります。どちらにも整理券発行がスタンバイされています。ドアの手前にょきっと出ているカバーを被った物体がそれで、デザイン性に抜かりはありません。
大分方先頭車は5人掛けロングシート、佐伯方先頭車にはトイレと車椅子スペースが設けられています。2両1組の車内、その中の行き来も当然起こり得るわけですが、貫通路の天井を客室と同じ高さにして貫通路を廃止している点は画期的です。
画期的…な割には吊り広告に阻まれて写っていません(^^;;

 
車椅子スペースを左画像に、トイレは右の画像になります。車椅子スペースはスマートな造りで、ヒーターも窓の下に出っ張ることなく設けられています。車体を隣の車両と共有したからでしょうか、非常通報機を網棚の上の方に設置したのは車椅子ユーザーに無理させるようなもので、残念です…。
トイレはユニットになっており、そのユニットの上にも蛍光灯が通っています。ユニットをいかにユニットっぽく見せるのにこだわる事なく、ユニットそのものにデザインを施すのはさすがです。
ユニットの上まで掃除が行き届いているかが気になる今日この頃です。


乗務員室との仕切りです。ここもユニット化されており、ゴミ箱がそばにあることもあって半室構造の運転台は電話ボックスのような印象です。ここの居住性は果たしてどうなのでしょうか?
運賃表示器も備えていますが、ワンマン運転の方法が変わったため現在は使用されていません。そこまではさすがにデザインしきれなかったのでしょうか、小さめの表示器に特徴はありません。

改めて乗務員室のユニットです。消化器も上手い具合に収まっています。
改めてお洒落な印象を受けます。銀色の内壁にユニットの壁が丸く回り込んでいる様子はよりユニットらしさを表現しています。トイレもそうですが、もうここまでくると取り外したり別の所につけたり、空き地に放置したりしたくなる感じです(^^;;;

今は目新しいのでそのような感想が矢継ぎ早に浮かんできますが、果たして飽きる日は来るのでしょうか…。


天井もキレイにまとまっています。グレーでまとめ、蛍光灯は剥き出しの物を使用しています。
周りが目立っているのでここはシンプルにいきたかったのでしょう。冷房の吹き出し口も目立ちません。
汎用品かどうか詳細は不明ですが、蛍光灯の止め具のデザインがこの車両の銀色にしっかり合っています。もしそこまでデザインしているとしたら…ただただ驚きです。


一方床には様々な模様を組み合わせて奥行き間とフットラインを演出しています。ブルーグレーをベースに濃いめの灰色でラインやドットを描いています。
水戸岡さんはこのブルーグレーを気に入っているのでしょうか、815系以外の車両でもよく見かけます。

 
ドア周りです。左の画像は鴨居部にLED表示器を設置したドアです。吊革の位置が表示器と被っているのであまり差は感じられませんが(^^;; 右の画像はLED表示器の無いドアで、日豊本線の上り列車では進行方向右側のドアが該当します。
ドア周りの握り棒や鴨居部の一体となった処理は815系以外の日立製の通勤車両でも見られますが、握り棒はまだ従来の物の方が使いやすく、デザインが先行してしまっているかなぁと思ってしまいます。
黄色のドアはどこからでも見やすく、周りに黄色が持つ暖かさをお裾分けしているようにも見えます。
半自動ドアではありませんが、両端のドアは締め切る事が出来ます。

 
鴨居部をクローズアップしてみました。LED表示器やドアコックなど、全体のデザインに融合できるようそれぞれ配慮している様子がうかがえます。
どちらも広告枠のみで広告が入っていませんが、広告に遠慮してLED表示器は小さめの物を用いています。次駅案内や行き先などを表示することができます。広告枠の維持か、LED表示器の文字の大きさか。独自の物を作るか、他系列の物を流用できるようにするか。設置にあたって結構悩める部分は多かったのではないかと思います。


側窓は1枚窓の固定窓です。眺望電車と思ってしまうほど見事な大きさを誇ります。
カーテンがないのと窓枠の下辺が座席の背もたれよりも若干下なので清掃がそこまで行き届くかが心配ですが、これまでのシートピッチと窓割りが合わないというJR九州の近郊形電車で聞かれていた不満を一気に解消してしまいました。


ここからは怒濤の座席トリニータ。まずは車端部の5人掛けからです。
完全に1人ずつ区分けしたロングシートで、片持ち式を採り入れています。
これまでこのようなシルエットのロングシートがあったでしょうか。コストと質感の両面に挑んだ結果、まだ誰も見た事のないロングシートが生まれたといっても過言ではありません。
あ、肘掛けが真ん中にも入っている点は素直に嬉しいです。


整理券発行機が設置されたドア〜ドア間10人掛けのロングシートです。この座席も真ん中に肘掛けが入っています。
黒のモケットに銀色のフレームという組み合わせは斬新ですが、背もたれの上にヘッドレストが設けられている点も斬新です。戸袋部分の座席にある背もたれ上の四角がそれで、座り心地に一役買っているだけでなく着座位置が明確になり、背もたれをシャキッと伸ばして座りやすくさせる意図もあると思います。座り心地もヘッドレストに支配されているわけではないので、ヘッドレストが合わないと言って極端に姿勢や座り心地が悪くなる事はありません。


整理券発行機の無い区画は11人掛けのロングシートです。主に優先席に充当されている区画にもなっており、背もたれにカバー、ヘッドレスト上にシール、そしてヘッドレストと背もたれの間に装飾を施してアピールしています。ヘッドレストの上のシールは場合によると髪の毛を挟んでしまいそうで、個人的にはあまり好きではありません。それよりも窓にシールを貼られる方が嫌なのですが(^^;、優先席は背もたれカバーだけで十分認知できると思いますが、如何でしょうか?


縦撮りです。このように見てみますと網棚も座席フレームも楽しいデザインが施されています。芸の細かさにはただただ脱帽ですし、同じ物のコピーになりがちな通勤電車・近郊形電車に新たな楽しみ、電車の作り方を教えて貰った気がします。



ただ、デザインに気を取られすぎているなぁという点もあります。例えば、シートヒーターの角度の浅さ。そしてこれからの座面の沈み込みに対する維持管理です。維持管理まで徹底されて始めて「居心地良い空間デザイン」が完成されるのではないでしょうか。どうかいつまでもこの車両に対する「格好良さ」が失われませんように。


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