JR北海道  711系100番台[冷房改造車]
 
  昭和42年に試作車が、昭和43年には量産車が、そして昭和55年に3次車が増備された711系です。
私は711系とはなかなか縁がなく、今回取り上げる冷房改造車くらいしか乗れませんでしたが、3ドア改造車、登場時の塗装に復元した車両、割と晩年まで残ったらしい試作車など、最後の最後までバリエーション豊かだったようです。
今回取り上げる711系はS-105編成です。室蘭電化開業時に増備され、これまで両先頭車にあった便所が室蘭方先頭車のみの設置になりました。冷房化は2001年以降の施工、2015年に廃車になりました。
S-103編成の先頭車2両は静態保存されているようで、岩見沢で「赤い電車」として現役時代と同じように親しまれているようです。気軽に旅ができる世の中に戻ったら一度行ってみたいものです。
(取材・撮影 JR室蘭本線・東室蘭〜苫小牧)

 

 

 


車内全景です。2ドアデッキ付きで製造当初の車内からロングシートの区画を伸ばした仕様です。様々な資料を見ると急行運用もこなせる近郊形というコンセプトだったようで、実際国鉄時代には急行運用もこなしていたようですが、晩年の車内は通勤通学に寄った格好で、それでも711系全体で見渡すと試行錯誤を繰り返した様子がひしひしと伝わってきます。
少し暗めのアイボリーの化粧板に少し小さめの二重窓がいかにも北海道といった雰囲気ですが、こげ茶色のモケットやデッキとの仕切りが窓ではなく壁だったのが、北海道としてはちょっと珍しい存在でした。

 
中間車のデッキとの仕切りです。この区画も側窓1つ分ロングシートが延長されています。左の画像は小樽方、右の画像は室蘭方の仕切りで、どちらも機器室が左側に設けられています。その機器室の手前は2人掛けロングシートと戸袋窓と同じくらいの大きさの側窓を備えています。また、冷房の制御装置でしょうか、室蘭方の仕切りには制御盤が右側に見えます。パンタグラフの下ということで天井が若干低めですが、天井が真っ平になるほど低くはありません。
モーター車はこの中間車のみ、結構静かな走行音だった印象があります。眠たかっただけかもしれませんが(^^;;


その機器室です。電動送風機や融雪装置が入っているそうですが、雑誌についていた形式図は機器室の表記でした。遠目から見るとトイレと間違えてしまいそうですが(^^;; トイレのご案内のステッカーも貼られています。


先頭車のデッキとの仕切りです。元々この区画は2人分ロングシートが展開されていましたが、仕切りはどちらもキハ40形のような窓はなく、壁…そして広告枠になっています。試作車の時点で壁だったので、急行運用もできる近郊形としては急行の方の仕様に合わせたのかもしれません。とはいえ、その仕切りを背もたれに活用することはなかった上に広告枠が高い位置にあることから、アイボリーの壁がどどーんと広がる、ちょっと寂しい空間に映ってしまいました。


小樽方先頭車の室蘭方車端部には洗面所やトイレがなく、客室部分がその分伸びていました。ロングシートは当初は5人掛けがセッティングされていました。窓枠の上の座席番号はロングシートに改造された部分も含めて製造当初から変わっていないため、元々クロスシート部分だったところと改造されてロングシートになった部分が一目瞭然!という…私以外には誰も得しない仕様でした。ロングシートで窓側・通路側と言われても困ってしまうので(^^;; 優先席の表記並みにこだわって欲しかったです。
デッキとは扉の他に通風孔でつながっていましたが、乗務員室に隣接するデッキに限り、客室から冷房のダクトが伸びていました。


分散形クーラーが印象的な天井です。このクーラーの設置により扇風機は撤去されています。1編成だけ車内全体にラインデリアの如くクールファンを設置した編成がいましたが、真っ先に廃車になってしまっています。
中吊り広告の枠は製造当初から備わっていました。荷棚の意匠は急行形で見られるもの…と、結果として711系ならではの雰囲気がこのあたりから形成されていった気がします。冷房だって薄目で見れば試作車のデカい送風機に見えなくは……すみません無理でした(^^;;


床です。ロングシート部分はロングシート拡大に伴ってコルク柄の模様に変更されていますが、クロスシートの部分は元々の灰色のもののままです。先ほどから床が2色登場していて「まるで…別形式?」の様相を呈していたのはこのカラクリです。
JR北海道ではキハ54形のロングシート拡大改造でも見られた手法です。
中間車の点検蓋では「あれ、これ721系の模様では?」と思う部分もあり、苗穂の秘技を見ているかのようでした。

 
デッキ周りです。右の画像は乗務員室との仕切りで、ダクトが上に張りだしている様子、仕切り窓の小ささなども伺えます。
ここだけ見ると急行形の様相ですが、北海道の車両はデッキから入るのがこの時代は半ば当たり前で、例外を探す方が難しかったです。ステップもしっかり備えていますし、左の画像では水滴を落とすようなマットも備わっています。鴨居部には広告枠も備えていましたが、この時は何も入っていませんでした。
ドア自体はこの100番台からステンレスのものに変更になっています。種別板が差せるような仕切り扉、そして傾いたゴミ箱の存在が哀愁を誘います。

 
小樽方先頭車にはトイレと洗面所が設けられていました。このあたりが急行形っぽい設備で、急行に充当しても恥ずかしくない設備を…という国鉄の意気込みが感じられます。尤も電車急行はこれで良しとしても、その当時の気動車の急行を眺めると…(^^;;;
とはいえ、終焉までこの洗面台がスペースとして残されていたのはつい嬉しいものがあります。そうそう、痰壺が無いのは時代の流れだと思います。


窓周りです。少し小さい二重窓です。その手前には細長いテーブルがあり、こちらも急行を念頭に置いた設備でしょうか。この形だとセンヌキを期待してしまいますが、取材した車両にはついていませんでした。その下には灰皿の跡も。

 
クロスシートは各車両とも4人1組のボックスが左右6組ずつ展開されていました。
面白いのが急行形と近郊形の狭間で座席は近郊形の方の仕様を展開した事です。ということで、窓側のひじ掛けがありません。とはいえ、711系試作車の雑誌記事で「近頃新製の急行形電車でも採用され始めた、人間工学的に掛心地を改良したもの」との紹介があるので、そん色ないと判断したものでしょう。通路幅も確保したいですし。この座席、座り心地は115系1000番台あたりのクロスシートに近いものがあります。柔らかい座面と広めの足元は空いていればまったり過ごせる空間でしたが、冬の窓側の寒さは果たしてどうだったのでしょうか。
通路の手すりは複数部分を握れる大きいものがスタンバイしていますが、711系に関して言うと半月状の手すりは試作車、量産車とも採用されていません。


先頭車の5人掛けのロングシートです。元々2席だけロングシートだった区画で、3席分拡大しました。優先席は各車両共通で車両の前後、片側2席分が指定されています。優先席のモケットはJR北海道共通でラベンダー色…こげ茶との相性が微妙です(^^;;
面白いのが座席の区分。2人・1人・2人に分割されています。暗に着席定員を促すような仕掛けになっています。

 
室蘭方先頭車には8人掛けのロングシートもあり、ここの優先席は3人掛けでした。こちらも元々5人掛けだったところを8人掛けに拡大し、拡大したところの座面を1人、2人に分けています。ただ、この座面配置だと着席定員を促す目的は二の次、とにかく2人掛けの座面を使うのだ!という意図がありそうな気がしてなりません(^^;;; また、元々の座席も2人・3人に分割されていた様子も伺えます。
奥まで深く腰掛けると座面の柔らかさが染み渡る座り心地です。路線の環境もあるとは思いますが、室蘭本線では乗り心地の良さを感じた711系、ロングシートでもまずまずの移動空間でした。

 
中間車はこの組み合わせでした。2人掛けロングシートと8人掛けロングシートです。そのうち8人掛けロングシートは目の前が機械室になる席がありますが、仕切り扉との間にデッドスペースがあり、若干空間に余裕があります。景色を取るか、余裕を取るか…私だったらクロスシートを取ります(^^;;;
それにしても、製造当初からロングシートが存在する中で急行運用にも入っていたわけですが…特急が故障を頻発していたせいか、この形式に関してはロングシートに対する反応をあまり見ない気がします。
それだけ素晴らしい、地域に根差した「赤い電車」だったんだろうなぁ…と思いを馳せ、今宵もサッポロビールで乾杯するのでした。
 
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