JR東日本  東北本線(仙台地区)417系
 
  都市化が拡大するも車両面での整備の遅れが目立っていた仙台近郊の通勤輸送。417系はその状況に対応するために1978年に登場します。寒冷地にも「どんなもんじゃーい」とばかりに対応した重装備な車両作りをしており、特に車端部に大きく占める雪切室はその象徴とも言えるでしょう。しかし、455系や583系の近郊型転用と国鉄の財政難の影響を受けてわずか5編成のみ、15両の製造に留まっています。その後、1988年から冷房装置の取り付け、1990年ごろから塗装の変更、さらにその後半自動ドアに対するスイッチの取り付けなどが行われており、何かにつけて重装備にさらに輪がかかっています。現在も「快速仙台シティラビット号」に就くなどアグレッシブな動きを展開していますが、今後も廃車が続く717系や455系とは異なり、東北本線を中心に活躍が期待できそうです。
(取材・撮影 JR東北本線・仙台〜白石)

 

 

 


車内全景です。2ドアでデッキは無く、セミクロスシートの車内になっています。この構成は同時期に製造されたキハ47の電車版といった形ですが、仙台地区も含めてあまり近郊型電車での普及はみられませんでした。国鉄らしい硬い雰囲気も残しつつ、袖仕切りなどのカーブに新たなデザイン性を模索していたのかな?という雰囲気を感じる車内です。

 
さて、さらに車内全景の画像が2枚出てきました。どれも2ドアでセミクロスシート、袖仕切りの形も同じ…なのにモケットが違うし、右の画像はトイレと思しき部分が写っていますが…実はこれ、全て417系の車内になります。

今回取り上げる417系、それから仙台地区で走る455系、717系など3両1編成で走る国鉄時代に製造した列車について、JRになってしばらくしてから座席モケットを1両ごとに別の色に切り替えていきました。確かゴミ箱設置とセットで車内美化を訴える文章と共にプレスリリースで告知されたような気がしますが、あいにくいつどこで見たかを忘却しております。申し訳ないです。で、そのモケットの切り替えが順調に行われた結果、このように「1編成で3度おいしい」車内になってしまいました。


童謡チューリップのノリで一度に3つ並べてみました。あなたのお気に入りの車両はどれですか?
そして、この417系の特徴は「モケットの色」だけには留まりません。

こちらは編成・座席配置図です。薄い灰色の雪切室や機器室などのスペースがこの3両とも多く取られています。これも417系の特徴の一つで、それらのスペースによって車端部のロングシートの配置が実に変則的になっています。ロングシートの定員が左右非対称になってしまっている他、車端部の座席定員が最大14人、最小7人と2倍もの差が出ています。今回このページでは特に車端部の配置が特徴的なクモハ417、クハ416の車内を中心に見ていこうと思います。

 
まずは乗務員室との仕切りです。左の画像はクモハ417、右の画像はクハ416の仕切りになります。
左に小窓がついていますが、その小窓の前に運転席があり、仕切り扉を挟んで右側が助手席になります。2枚を比較すると助手席の仕切りの位置が大きく異なっており、左の画像、クモハの方は大きく手前に出っ張った格好になっています。これは助手席の背後に雪切室があるからで、外から見るとちょうど縦長の窓の隣にはルーバーがついています。
いずれにしても近郊型とは思わせないスペースの置き方にしばし唖然とした自分がいます(^^;; 連結時にはスマートに列車どおしをつなぐ役割を果たせていますが、前面展望やラッシュ時にはちょっと不向きかな?なんて思ってしまいます。


クモハ417、仕切りの部分の出っ張りを別角度から見ています。大きな扉がこちらにも設けてあり、もはや開けると中に人がいそうな雰囲気がしますが(^^;;通常乗客が開けて入るようなスペースではありません。また、扉の寸法から察するに、この大きさでも雪切装置的には「いっぱいいっぱい」だったのかもしれません。
蛍光灯が無いせいか、ちょっと暗いスペースになってしまっています。

ちなみに雪切室は電動機などが冷却用に直接空気を取り入れる際、それと一緒に取り込んでしまう雪を電動機などに入るのを防ぐための機器を備えたスペースで、417系の他に115系1000番台などにも採用されています。ただし115系1000番台のそれは417系ほど大きいものではなく、なぜ417系だけこのように大きなスペースが必要だったのか、今一歩理解できません。


その大きなスペースの傍らには温度計が。より客室に近いところに置いてあるという点では、より正確な室内の温度を測れるかと思います。


逆サイド車端部の様子です。向かって左手には配電盤が入っていると思われる機器スペースが、右手には先ほども紹介した雪切室があります。座席にして2席分の出っ張りです。車端部のこのような配置はクモハ417の車端部のほか、中間車モハ416の両方の車端部に見られます。従ってこの車端部が417系では一番メジャーなのかもしれません。
雪切室の周りのスペースは蛍光灯の数が少ないせいもあり、やや暗いのが気がかりです。

 
その雪切室のスペースをまたしても別角度から覗いてみます。そしてゴミ箱。JRの仙台地区を走る車両にはゴミ箱が設置されている車両が多いですが、この車両に関してはうまい具合に設置スペースがあるようです(^^;; この壁同然の扉も開け閉めに支障が無い範囲で掴み棒を設置すれば少しは車内の奥まで立ち客が入る手段ができるのに… もっとも首都圏のように奥までぎゅうぎゅう詰めになるくらい混まないのでしょうか?


こちらはクハ416の車端部です。先ほどよりも少し手前からの一枚です。袖仕切りが天井までぐいぐいっと伸びていて鴨居部のドアエンジンカバーの一部を形成している姿も伺えます。塀の先にいるフラミンゴを見ているような雰囲気ですね。
さて、この車両の車端部には便所が設置されています。ではここでクエスチョン、車端部の一番端に便所があるのですが、その便所の位置は貫通扉を挟んで左のボックスでしょうか?右のボックスでしょうか??
この画像を見てお答え下さい。シンキングタイムスタート。



はい、答え合わせです。
左の画像が車端部のうち貫通扉から左にあるボックス、右の画像が貫通扉の右にあるボックスですが、

 
左のボックスには鏡、そして乗客が開けられそうな扉があります。ということで中を開ければ便所、正解は左のボックスでした。右は機器室になっています。いやはや似たり寄ったり、人生の選択を見事に迫ったかのようにそびえ立っていますね(^^;;; 私みたいなおっちょこちょいは思わず右のボックスの方に突進しそうな夢を見そうです。この画像右の機器室、見た目が雪切室と同じなのですが、電動機に空気を送る目的もある雪切室が電動車で無いクハにも果たしてついているのでしょうか(^^;;; この機器室のおかげで「便所の向かいのクロスシート」の設置は見送られています。


天井です。登場時は冷房準備車であり、扇風機が設置されていました。現在は扇風機の跡はきれいになくなり、ツルンとした化粧板と点々と吹き出し口があります。なお、フラットな天井にはなっていません。
吊革はドア付近とロングシートの部分のみの設置で、いずれも握る部分が三角に改良された物を使っています。


床も天井と同じくシンプルに灰色一色でまとめています。どの座席モケットの色にも合った色を選んでいます。


ドア周りです。大きな鴨居部のドアエンジンカバーやすぐそばまで迫った袖仕切り、そしてドアのすぐ手前にあるステップが特徴になります115系などの既存の近郊型電車とはその趣がガラッと変わっています。
鴨居部にはドアチャイムが目立たないような形で設置されており、無塗装のドアには2種類のステッカーが貼られています。ステッカーは仙台地区でよく見かけるもので、無塗装のなかでなかなか目立っております。

そのステップの部分を先ほどとは逆から眺めています。「あつい!」とインパクトの大きいステッカーはこの車両にも健在。冬にこの車両に乗ったことはありませんが、実際かなり熱そうな文字です(^^;;
ドア部分の吊革はなるべくこのポジションに乗客を立たせたまま電車を走らせたくないという、バリケードのような思いもあるのかもしれません。

半自動ドアを備えた417系、当初は手動で開け閉めしていましたが、JR化後ボタンが設置されました。左の画像は車内側、右の画像はやや傾いてますが(スミマセン…)車外側のボタンになります。
719系などですっかりお馴染みのボタンであり、417系だから何か特別な装備や操作があるわけではありません。


窓周りの桟には扇風機のスイッチがあったと思われる跡が残っています。窓は2段窓で、テーブルなどは特についていません。テーブルがつけば455系などの急行形電車との差もぐぐっと近づくところですが…美化事情でもあるのでしょうか。

さて、ここから怒涛の座席ゾーンです。いつもとは異なり今回はクロスシートから紹介です。
 
クロスシートです。座席モケットは1編成に3種類ありますが、フレームはどの車両も共通です。
この車両のクロスシートは編成を通じてドア〜ドア間のみの設置で、片側4人1組の固定ボックスシートが4組、両側合わせて32人が座れます。この32人という数も417系のどの車両も共通です。
この32人のチャンスは3ドアセミクロスシートの115系1000番台と同じで、ドア数が少ないからといってクロスシートに座れるチャンス増大!というわけでは無いようです。

 
別角度からです。左の画像がちょうどロングシートの隣に置かれる、仕切りを兼ねた席になります。
モケットは変更されたもののバケット化などは行われておらず、座り心地も上々。座面に疲れを感じさせません。ただ、同区間を走る719系や455系とは異なり、若干足元が狭いかな、という印象を受けます。元々シートピッチが近郊型の設定なので仕方が無いといえば仕方が無いです。肘掛は通路側のみの設置でクリームに塗られています。このクリームも灰色同様様々な色のモケットに合います。頑張っています。


さて、お待たせしました。いよいよ怒涛のロングシートコレクション。クモハ417・クハ416の画像でふんだんにご紹介です。

 
まずは2人掛けのロングシート。これは417系3両とも見られる、ドア〜クロスシートの座席です。
まさに袖仕切りのおかげで「仕切りと仕切りにすっぽりはまった」形でロングシートが設置されており、さらにドア側の袖仕切りも肘掛の役割を果たしていないため(詳しくは後ほど・・・)思った以上に狭く感じるかもしれません。

この2人掛けのうち、一部区画(4席分)は各車両とも優先席が設定されています。モケットもこのように優先席柄に、戸袋窓には優先席を示すステッカーが貼ってあります。各車両とも人数の偏りが無いのは結構ですし、JR東日本共通の柄なので文句のツケドコロも無いのですが、若干ポジション的に地味かな、なんて感じます。
クロスシートの仕切りの部分にも優先席があるステッカーを貼るともう少し目立つかもしれません。


続いて3人掛け。これはこの417系では1箇所のみ、クモハ417の乗務員室の背後、雪切室とドアの間にあります。
座り心地はやはり安定しており、少し座面の勢いが寂しいかな…と思った所もありましたが、基本的には良き国鉄近郊型電車の座り心地をそのまま楽しめます。

 
さらに4人掛け。こちらはクモハ417、クハ416の乗務員室、運転台の後ろの設置になります。外観からでは大き目の戸袋窓と小さ目の開閉窓がポイントになります。この4人掛けロングシートは編成中2箇所の設置で、3人掛けよりもレア度アップ…かな?


さらにさらに5人掛け。画像はクハ416の便所の手前に設置されています。他にもクハ416の乗務員室背後、4人掛けの反対側に設置されており、こちらも編成中2箇所の設置になっていますが、モケットの種類は1種類のみです。
2人掛けと3人掛けの組み合わせで、スタンションポールは無いもののクッションが分割されています。


さらにさらにさらに6人掛け。画像では5人掛けと大差ありませんが、クッションは4人掛けと2人掛けに分かれています。奥が4人掛けの座席です。この6人掛けは3両とも設置されており、合計4箇所確保されています。いずれも機器室や雪切室の前にあり、6人掛け+機器などのスペースで車端部を満たしている格好です。


さらにさらにさらにさらに8人掛け。こちらはクモハ417とモハ416のみの設定で、いずれも車端部、6人掛けの反対側にあります。合計3箇所、赤と青のモケットの2種類が味わえます。
座席は4人ずつ置かれている格好で、窓割がクモハとモハで地味に違いますが、中は同じ8人掛けです。

ということで怒涛のロングシートギャラリーいかがでしたか?
もう一度振り返ると、この417系3両編成の中にあるロングシートは2、3、4、5、6、8人掛けとなっています。
今度どこかの運転場公開などにて、この車両の車掌体験が出来る際にはぜひ言ってみてください。
「この列車の座席は2人、3人、4人、5人、6人、8人掛けとなっております。定員着席にご協力お願いします。」
・・・これを実物の列車で、本物の車掌さんのお声でぜひ聞いてみたいですね(^^;;;

 
最後にクローズアップ袖仕切り。営団地下鉄6000系の流れを受けたような感じもしますが、化粧板が張り出しているのは下側のみで、見た目若干違うかな…という印象です。
袖仕切りの上には透明のアクリル板がはめこまれており、肘掛の機能を封じる代わりにドア開閉時の冷風を避けられるような機能を設けています。今では東北地方の719系の他、関東地方の201系、205系の一部で見られるアクリル板はめこみ、国鉄近郊型電車での「元祖」はこの417系ではないかと思います。元祖ながら車内の雰囲気を損ねない、なかなか秀逸な設備だと思います。

個人的には夜酔っ払いさんが酔った勢いで頭をツッこんで割りそう…なんて100%余計なアクシデントを考えてしまいますが、アクリル板に顔を近づけたときに反射して見える自分の顔に思わず目が覚めるかな?

・・・全く余計な締め方ですね(^^;;

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