JR東日本  カハフE26形
 
  あまり耳馴染みのない「カハフ」ですが、見れば誰もが納得…左の画像のとおりカシオペアの展望ラウンジの車両です。
外観は登場当時から変わっていませんが、撮影した函館駅にはもう来ないようで…現在は「カシオペア紀行」として首都圏と東北を結ぶ列車を中心に団体専用列車として走っています。
「カシオペア紀行」というと高額料金設定のパッケージツアーの印象が高いですが、それでも現役の「カシオペア」の時を彷彿とさせるような人気ぶり。E26系に乗るだけのツアーからE26系をきっかけとして様々な観光に触れられるツアーまで種類は様々ですが、特に現役時代なかなか乗りにくかった「おひとり様」にも門戸を開いたようなツアーがあるのは嬉しいものです。かくいう私も、その手のツアーにやっとの思いで乗ることができたわけですが…
(取材・撮影 JR東北本線・上野〜仙台他)

 

 

 

 
本題に入る前に…カハフE26形の展望ラウンジに入るには長い廊下を通らなくてはなりません。この車両の上野方、まずは売店、そして扉、乗務員室のに続いて階段を上がり、機器スペースの真ん中をひたすら歩いていきます。
始発駅から展望ラウンジで黄昏サラウンド…という方もおられるかと思いますが、12号車のドアは業務用とのことで開きません。11号車からの出入りになり、この味気ないアプローチを通って入室…となります。全貌がわからない通路、ドキドキしますネ。


売店開店中はこのように冷蔵ケースとレジブースが半々…といった感じです。通路挟んだ反対側は業務スペース、売店開店中もカーテンで遮られています。
カシオペア紀行では売店や車内販売で売られているものは各個室に案内が置いてあり、あまりショーケースの前で悩まなくても買い物ができます。一方、開かないドアの前にはカシオペアグッズの展示も行われていました。
E26系を端から端まで歩くと度々思うのですが、A寝台個室だけのフラッグシップ(だった)車両にしては、淡泊というか、味気が無いシーンが度々あり、ここもそう感じざるを得ない場所の一つです。客に開けさせることを想定したショーケースの位置には冷たささえ感じます…。

 
開かないドアを撮影しましたが、ドアそのものは他の車両のドアと同じで、手すりも長いものが用いられています。違いは小さく書かれた業務用の扉であることを示すステッカー、そして乗務員さんが外の状況を確認するためのスペースが続いていることくらいでしょうか。他のデッキ同様ゴミ箱が設けられていますが、展望ラウンジの中にも小さいながらしっかりゴミ箱が備わっています。

 
階段を上がった先、長く続く通路です。それなりにディーゼルエンジンが回っている音が聞こえてくる区画で、機器スペースと思しき扉と縦方向への手すりがあります。通路幅の広さもそこそこで、ここに立ち止まっては困る…という意志をしっかり感じます。
 
この区画の天井と床です。天井は片側のみ蛍光灯を設けています。片側だけ蛍光灯…だとE4系などの通路の天井を思い出してしまいますが、E4系の通路とはこ異なる華やかさは蛍光灯の色味と化粧板の色の効果だと思います。
床は階段部分からカーペット張り。騒音低減の効果も狙っての起用でしょうか。


ラウンジに入る直前には自動販売機がありますが、あいにく使用停止中でした。電源も入っていないようです。登場時、ここの自動販売機は2台設置されていましたが2023年の時点では1台のみ。さらに反対側には公衆電話の設置もありましたが、現在はブースごと壁で塞がれてしまい、痕跡をたどることも難しいような状況です。思えば展望ラウンジへの道筋を示すピクトグラムが不自然なかぎ括弧のような形状をしていましたが、公衆電話のマークを切り取ったもの…かもしれません。
それにしても、なんとも勿体ないスペースです。ショーケースを置いて売店そばのドアで飾っていたカシオペア車内販売グッズの展示でもすれば良いのに…(^^;;

 
ということで、ようやく展望ラウンジの中に入りました。左の画像はよく旅行サイトなどで見る画角で、上野駅入線直後に撮影したものです。カーテンは発車までに乗務員さんがちゃんと上げたので、上野駅発車時点で大きな窓からお見送りができました。
右の画像は深夜撮影した逆方向の全景です。登場時の様子と雰囲気が異なるのは座席の表地をモケット張りからレザー張りに変更したこと、排気管の色が変わっていることが大きいと思われます。しかしながら…足元のライトワークがなかなか素敵なのは登場時も今も変わりありません。


先に先頭部分です。左右非常用のドアが備わっており、その先に4席、そして開放的なガラス部分と続いています。撮影したのが下り列車だったので機関車とコンニチワ…この部分を使って外から記念撮影をする方もおられました。
展望ラウンジとして最も非日常の世界が愉しめる区画ではないかと思います。故にカシオペア末期にはここからの展望を長時間録画しながら居座っていた方がいたとの話しも訊きますが…カシオペア紀行では「カメラを窓ガラスに固定しての撮影はご遠慮を」と呼びかけています。

え、私?青森から秋田まで展望ラウンジが最後尾と聞いていたのですが、まさか仙台で引き摺り下ろされるとは、ねぇ…。


逆サイド、上野方は両開き扉がスタンバイ。E26系の車内で両開き扉は意外と珍しく、共用部分ではここくらいしか思い当たるところがありません。コバルトブルーの味気ないドアですが、このドアに窓をつけるべきか否か…はなんとも悩ましい選択であります。向かって右側にはゴミ箱や非常ボタンがシンプルにまとまっています。左側はブルーリボン賞のプレート…の写し…やマガジンラックが設置されています。画像は入線直後のピュアな状態ですが、走行中はこのマガジンラックに乗車記録ノートなどが置かれます。妻面近くには消火器も設置されていますが、消火器は非常扉の近くにももう1個設置されています。


ツルンとした天井はこれまでのラウンジカーやロビーではあまり見なかった仕様で、非日常感の演出に一役買っています。足元もそうですが、ライティングのセンスはお見事で、登場時の軽やかなモケット張りの車内ではどのような美しさを奏でていたのだろう…と思うところです。一方、登場時の画像などを拝見すると、座席表地の張り替えに合わせて色合いを少し淡くしたように感じますが…実際のところ、どうでしょうか…。


床はカーペット張りです。模様としては紺色を主にした柄物ですが、せっかく足元を緩やかに照らすのであればもう少し遊び心の溢れる模様でも良かったのに…とまた欲張りなことをいう始末。そう思わせるくらい、闇夜の展望ラウンジのライティングはなかなか良い居心地を提供してくれます。

 
この展望ラウンジ内には非常扉が左右1か所ずつついています。使い方が色々と書いてありますが、開けた先にまだそれなりの段差があることについては触れられていません。座席の下に一般的な脚立(!)が格納されており、それで降りることになりそうですが…有効開口幅は趣味誌によると約40cm。私の横幅で無事に通過できることを願うばかりです。


窓周りです。側窓はカーテンこそついているものの上部が湾曲した窓で、意外と映り込みが気になります。テーブルの下には澤田商工株式会社の温風暖房器#1006Dタイプがスタンバイ。寒さ厳しい北海道を走ることを配慮した上での設置だと思いますが、使用中は暖かくなるので触らないよう注意が必要です。

 
レザー張りになった座席周りです。片側はロングシートを彷彿とさせる座席が7人分設置されています。横幅にゆとりを持った設置で、サイドテーブルも備わっています。右の画像は模様替えした排気管付近から撮影した画像で、脚立がチラリ…。
後述する1人掛けの座席と比べると座面がしっかりした硬さでできている感じで、あまり沈み込みはありません。座面の形状の独特さにさえ慣れてしまえば少しまとまった時間寛いでも良いかな、と思わせる座席です。
ただ、意外と座席背後に設置された照明が気になります。また、排気管は夏場でもそこそこ暖かいので、寄りかかるのは避けた方が良さそうです。

 
1人掛けのソファです。窓側には7席備わっています。
その場でクルクル回りますが、大きな場所の変更はできません。右の画像は背後から撮影したものですが、レザー張りになって幾分かムチムチしたような印象を受けます。モケット張りの頃の軽やかさからは一転した格好です。
座面は柔らかめのもので、先ほどのロングシート調の座席とは座り心地は大きく異なります。背もたれはやや低めで姿勢を崩して座ると少し腰の負担が大きくなる仕様です(^^;;
座席によっては足元が狭い区画もありますし、座ったら壁…の区画もあります。長居し難い仕様…というよりも、展望がウリのラウンジで当たり、ハズレを作るのは如何なものかと喝を入れておきたいものです。


非常口から車端部にかけても先ほどと同じ1人掛けのソファが左右2脚ずつセットされています。最前列は展望と引き換えに足元がかなり狭くなっています。反面、大きなテーブルはちょっと魅力で、ここから離れたくなくなる理由が少しだけわかったような気がします(^^;;;


深夜3時をまわり、7時間ほど停車していた白河駅を発車しました。時折雨粒の星をガラスに映し、闇夜を淡々と走る様を見て、旅人は安堵したものでした。が…

これからカシオペア紀行にお乗りになる方に…僭越ながら1点アドバイスを。
ダイニングカーでの朝食が列車遅延〜途中駅打ち切りでカットされた時、とある旅行会社は食事に関して何もしてくれませんでした。そう、クルーズツアーのような優越感に浸るのも愉しい気分になれると思いますが、ある時、ある瞬間食事にありつけないという遭難状態に陥ってしまうのです。
売店でお菓子を買うのも良いですが、乗車前に小腹を満たせるだけの食料と飲み物を買い込むことを強くお奨めします。
この時の静かなる怒りが、どうかこれからカシオペアを愉しむ方の糧になりますように。

Have a nice trip!
 
ひとつ前に戻る
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送