JR東海  キハ75形
 
  1993年、これまで近鉄に圧倒されつづけていた愛知と三重、伊勢を結ぶ需要に一矢報いる形で登場したのがキハ75形になります。
これまでキハ58系で運転していた快速「みえ」に就いて早々、怒濤の加速と高速性能が評判を呼び、閑古鳥が鳴いていた参宮線に乗客を呼び戻し、三重と愛知を結ぶ移動手段としてJRが急速に見直されていくことになります。
これまで急行「かすが」として奈良県へ、また飯田線への臨時列車として静岡県へと遠征していたこともありましたが、基本は快速「みえ」と参宮線、武豊線のローカル列車を担当しています。
2両編成ながらディーゼルエンジンの音と正面全体に回るブラックフェイスは名古屋駅でも存在感があります。
(取材・撮影 JR参宮線・伊勢市〜鳥羽)

 

 

 


車内全景からご覧頂きます。3ドア転換クロスシートの車内は311系を始めとした名古屋都市圏の快速列車に共通した車内になっています。ただ、311系よりもちょっと華やかな感じがします。横引きカーテンや連続窓、そして淡いピンクの色がついたヘッドレストカバーが単調になりがちな車内を上手い具合に鮮やかにしています。
また、ディーゼルカーにありがちな床の「ステップ」や天井の段差などが全くなく、1990年代はじめにして他社を差し置いてディーゼルカーの「バリアフリー」を実現しています。キハ11形が霞んで見えますが(^^;;うん、勢いは大事です。

 
車端部です。左の画像は名古屋方先頭車の車端部で4人1組の固定クロスシートになっています。右の画像は鳥羽方車端部でトイレと4人1組の固定クロスシートという組み合わせです。311系と同じ構成ですが、キハ75形唯一の「仕掛け」がこの車端部にはあります。
妻面は大きく窓が下まで伸びた貫通扉がついていますが、311系とは違い色分けなどは特に行っていません。故にLED表示器だけがやたら目立つ、ある意味地味な配色の車端部になっています。
なお、車端部寄りの窓のみ開閉ができます。このあたりは313系の香りを感じます。


トイレ周りの仕切りです。トイレ表示灯が申し訳程度についているくらいで、壁の色も周りと同化してしまっています。車掌によるトイレの案内は音声であったものの、ドア周りに案内板をつけても良いような気がします。
凹んでいる部分はかつて公衆電話があった跡で、現在は撤去されてしまっています。


LED表示器です。時刻表示や号車案内、指定席か自由席か切り替えるプレートがキハ75形独特です。
車端部や乗務員室仕切りに設けられており、ドア周りには表示器はありません。クロスシートは座ると前を見ることが多いわけで、このポジションでの表示は姿勢的には自然に見えていきます。
ただ、場所としての制約から、LED表示部分の文字の大きさは良いものの文字数の表示は少なくなってしまっています。


乗務員室背後の仕切りです。ドア周りにしっかり吊革を設けて混雑する区間もカバーしています。
仕切りそのものはまさに「ワイドビュー」な窓配置になっており、特に仕切り扉と助手席側の窓は一体感があります。鳥羽を出てすぐ、伊勢湾のすぐそばを走る場面はぜひ前面展望をやってみたいところです。
なお、今回取材したのは0番台だったためワンマン設備はありませんでしたが、後年増備された500番台はワンマン設備があるため、若干仕切りの形状や装備が異なります。


天井周りです。特急列車くらいしかみられない、見事にフラットな天井です。カバーつきの連続照明も含めて、電車っぽい天井に仕上がっています。ラインデリアも勿論作動します。改めて、お見事。
その反面、一部区間では混雑も見られる快速「みえ」。吊革がドア付近しか設けられていないのは心配な面でもあります。


床はこの当時JR東海の車両で頻繁に見られていたツートンカラーに仕上がっています。
座席部分はグレー、中央はクリーム色でおとなしいツートンです。


ドア周りです。画像は車内中央のドアで、「自由席」「指定席」などと書かれたプレートを表示するためスモークの仕切りが上部まで伸びているドア周りになります。「一部指定席」の快速「みえ」で効果を発揮する表記です。
ドアそのものは化粧板を貼っています。鴨居部が大きくてドア窓との間が狭いからかもしれませんが、ドア窓が311系などよりも大きく見える気がします。

 
半自動ドアのため、目立たないグレーのカバーでドアスイッチも傍らに設けられています。右の画像は車外のスイッチです。車外からは「開く」のみ、車内からは「開く」「閉める」といった操作ができます。
全国で使われていていた丸いボタンの既製品とは異なり、キハ75形オリジナルの四角いボタンを用いています。四角い縁で囲われているのでしっかり指でプッシュする必要があります。


側窓は連続窓と横引きカーテンで他とは一味違う味付けになっています。その上には指定席に対応する座席番号のシールが貼られています。それらと対照的なのが素っ気ない荷棚。忘れ物は少なそうですが…もう少し着飾って欲しかったです。

 
ここからは怒濤のミキモト座席島。まずはドア〜ドア間の転換クロスシートを左の画像に、車端部の固定クロスシートを右の画像に出してみました。ドア〜ドア間は固定クロスシートをそれぞれ端に設け、間に4列分転換クロスシートを設けています。従ってドア〜ドア間はどこかで4人1組の区画ができることになります。
車端部の画像は名古屋方先頭車の車端部で、鳥羽方先頭車の車端部、すなわちトイレの向かいのクロスシートは別の座席を用いています。それの紹介はまた後ほどと致します。


まずは転換クロスシートから見ていきます。バケットシートで、ヘッドレストも一席ずつ分かれています。JR東海としては製造当時311系などで既に転換クロスシートは採用例がありましたが、窓側の肘掛けが独立している点、そしてシートピッチの広さが311系との差になります。ゆったりしたシートピッチと程よい沈み込みの座面が実に心地良い空間を作っています。

モケットは青系、ヘッドレストカバーはピンク。この組み合わせもお洒落です。

 
端の座席です。左の画像が中央のドア付近の固定クロスシート、右の画像は端のドアで用いられている固定クロスシートです。握り棒やヘッドレストカバーの形状、背面の処理などに違いがありますが、少し切り立った背もたれは端の座席の特徴としてどちらにも挙げることができます。
足元が塞がっているので寒風が暴れることもありません。また、清掃する側の利点として座面下の奥、掃きにくいところに丸みをつけてゴミがたまらないよう工夫されています。三角に光っている部分がソレです。うーん、マメです。


妻面に面した座席は若干横幅が短めになっています。切り立った背もたれはそのままです。この区画もご多分に漏れず肘掛けや横引きカーテンがついていますが、横幅が短く、すぐそばに側窓の端の部分がきているため、特に窓側の座席はカーテンや肘掛けがうっとうしい…と思ってしまうかもしれません。
通路側の肘掛けはモケットを貼って重厚な雰囲気を出しています。


さて、ここまでトイレ向かいの座席を引っ張ってきました。
理由はこの座席がこの編成の優先席に充当されているためモケットが濃いグレーになっていること、そして…

この座席が車椅子スペースを兼ねているため、座面を折り畳む事ができるからです。
 
端の席はこのように通路側の肘掛けと座面を上げることができます。上げるとそこには握り棒や車椅子を固定するためのワイヤーが登場します。ちなみに復帰は通路側下の方にレバーがありますので、東北のキハ40形の跳ね上げ座席のように「車掌さん呼ばないと元に戻らない!」という悲劇はありません。
 
トイレがあるので無理な姿勢での撮影でしたが、ドア側の座席もこのように座面を上げることが出来ます。
このシステムのため、座面が他の座席と比べると少し真っ平らな印象を受けますが、横浜線の6ドア車のような薄っぺらい印象は全くありません。他の座席の座り心地に近づけた努力を感じます。

…問題はスペースの取り回し。車椅子スペースとして使うには向きがトイレを向くか、窓を向くか、どちらかに固定されてしまいそうな狭さになってしまっています。また、腐ってもこの区画は優先席…優先すべき人が多すぎて困ってしまいそうです(^^;;
 
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