JR東海  311系
 
  近畿圏の新快速が221系だった頃、中京圏の新快速と言えばこの車両でした。1989年生まれ、デザイン博真っ盛りの頃としてはちょっぴり国鉄チックな外観でしたが、それでも当時としては新鮮な感覚として受け入れられていたのでしょう。以後、313系が登場するまで東海道線の新快速列車として名古屋を中心に運用され、313系が登場した後も東海道線をベースに活躍しています。
一気に製造されたこともあり、編成ごとに差があまり見られないのが平成生まれの車両ならではですが、車内は大きく分けて二つに大別できます。新車登場を紹介した雑誌記事ではクリーム色の貫通扉が目立った車内写真が出ていたと思いますが、今回は後期に製造された車両に大きく見られる、薄緑色を取り入れたおとなしめの車内を取り上げます。
(取材・撮影 JR東海道本線・岐阜〜関ヶ原)

 

 

 


と、いうことでおとなしめの車内からです。313系や211系とは大きく異なる、グレーを基本としたモノトーンの車内です。整然とクロスシートが並び、吊革や広告枠が最小限に抑えられている姿を見て、或いは117系では見られなかったクールな姿を見て、特急と同じような雰囲気を持つ内装にドキドキした方も多いのではないかと思います。これがJR東海流の味付けだと思った方もいらっしゃるでしょう。でも、3ドア転換クロスシートは通勤需要とクオリティの両立をしっかり図っています。


乗務員室との仕切りです。クロスシートだからこそでしょうか、仕切り部分にLED表示器が設置されています。それ以外、基本的なデザインは211系と同じです。窓の幅を大きくしたり連続窓風に見せたりするなど、311系っぽさを生み出している部分もありますし、この大きさに満足です。ただ、この形式らしさというよりも他系列からの流れを受け継いだ点が印象に残るというのは新型車両として、果たしてどうなのでしょうか…(^^;;

 
硬軟備わった部分として、便所のある車端部の車内も挙げられるかと思います。この部分は片側に戸袋窓や座席を設けず、トイレを設けています。そのトイレの直線的な作りが仕切り同様「守り」に入っているなぁと思う一方、公衆電話の設置は当時にしては画期的だったことを思うと、この車両に対する期待感は相当な物だったことが伺えます。
なお、現在公衆電話は画像の通り撤去されています。
車内での通話を遠慮する時代ならではの光景、これもまた時代の流れです。

 
車端部は向かい合わせの固定クロスシートが基本となります。優先席は後継の313系同様、ステッカーのみの区別となっています。戸袋窓や貫通扉の窓が大きいため、妻窓がなくてもあまり暗くは感じません。その妻面には運転台との仕切り同様、LED案内表示器が設けられています。
取材車両の貫通扉は渋めの緑色。これ、なかなか車内の中にうまく溶け込んでいると思います。洗練された姿にグッときますが、ドアノブは従来のままです(^^;


一部先頭車の乗務員室、その後の扉のさらに後ろには車椅子スペースが設けられています。
これは後年設けられた物で、一部の座席を撤去し、吊革の増設やヒーターの設置、側窓の固定化などが行われています。313系とは異なり、車椅子対応の座席などは設けられませんでした。


天井です。吊革はドアや車椅子スペースの上のみの設置、他はラインデリアとカバーつきの蛍光灯照明が続いています。カバーつきの蛍光灯による照明は117系で既にお馴染みだった設備ですが、3ドア転換クロスシートでも違和感がありません。


床はツートン。まさに灰色の座席が置いてある部分に灰色を、通路の部分にはクリーム色を配しています。


ドア周りです。窓がドアの幅ギリギリまで大きくなった姿が印象的です。この頃はまだ313系のようにドア周りを大きく見せるようなデザインは施していません。また、ドア上の鴨居部には広告枠と車内両端のドアにあるドア締め切り表示器のみの設置になっており、いわゆる半自動ドアではありません。このあたりは211系にも備わっており、東海道線を走る車両ではすっかりお馴染みになりました。ドア周りにスペースが若干あるものの寄りかかれる配慮は無く、扉上にしか吊革がないことから、ドア付近に立客が多数でてしまいやすい構造になっています。このあたりは313系で僅かながら解消の方に向かっています。


3ドアあるうちの両端のドア上、鴨居部には締め切りを示す表示器がついています。
締め切り中には黒い部分に赤い文字で「締切中」と表示されます。関東在住の人間的には東武鉄道の「締切中」が真っ先に思い浮かびますが、それよりもあまり目立たないのは気のせいでしょうか?!

 
座席周りです。まずはドア〜ドア間から。転換クロスシートが6列に渡って展開しています。端の席は仕切りも兼ねて固定されており、大きく樹脂パーツで覆われています。うっすら汚れた雰囲気がこの車両の「あまり新しくない」感じを出しており、他の部分とちょっとギャップがあるかな、という感じがします。
車椅子スペースが設けられた部分も元の端の席を寄せて、ドア〜車椅子スペースまでの間に4列展開しています。


端の席はトイレの脇であろうとなかろうと固定クロスシートで統一されています。端の席は通路幅に合わせて若干狭くなっており、この点はかつての近郊形電車と同じ作りなのですが、国鉄形のセミクロスシートにあった「ドアとクロスシートの間のロングシート」がなくなっています。事実上車端部が短くなり、その分ドア〜ドア間が伸びたわけですが、こうして見ますとなかなかうまい設計!とついつい頷いてしまいます。


転換クロスシート部分の座席を見ていきます。ゆるくバケット形状になっており、ヘッドレストも一人ずつ分かれています。灰色の落ち着いたモケットは近頃ちょっとくたびれ気味のようで、特に肘掛けのモケットに目立ちます。あ、肘掛けの形状は東海テレビを狙った物ではありません(^^;;
背もたれが腰のあたりにカーブを描いていますが、座り心地は思った以上に真っ平らな印象を持ちます。


端の席は背もたれが固定されています。肘掛けは窓側もあり、手すりも小さいながらしっかり完備。一方、ヘッドレストはつながっており、仕切りと兼ねている面がより一層浮き彫りになっています。
端の席特権として、画像には写っていませんが小さな小さな、飲み物が載るくらいのテーブルが窓際に備わっています。弁当を載せるほどの大きさでは無いので無理矢理載せると早かれ遅かれ落下してしまう可能性が高いですが、窓の桟に変わる「物置き台」と解釈すればその大きさにも納得です。


こちらは車端部、妻面に面した座席になります。こちらはちょっと切り立った角度ですが、脇に樹脂パーツを用いたり、手すりをヘッドレストの脇に設けたりするなど、他の席とあまり変わらない見た目にこだわっています。でも、ちょこっと横幅が狭いのは先ほどご案内したとおりです。
ちなみにこの区画には小ぶりなテーブルはありません。側窓の桟で対応できるということなのでしょうか。

 
最後に車端部に設けられたLED表示器です。行き先案内や次駅案内もラクラクこなしますが、注目ポイントはその上にある時計です。ドア上の鴨居部にLED表示器を設置する車両が多くなるにつれて、この時計表示も過去の物になっていきました。メンテナンスが大変だ、或いは些細な遅れもバレてしまうなど様々な推測ができそうですが、腕時計、そして携帯電話でより手軽に、より簡単に時間を確認できる様になった事が普及しなかった大きな原因なのかもしれません。

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