伊豆急行  100系[クモハ103]
 
  伊豆急行の開業から走り続けた100系が引退したのは平成14年。そこからクモハ103が復活するとは思わず、さらに令和1年に引退するとは思わず…最後の最後に取材できる機会を作ることができました。
個性的な車両が賑やかに走っていた全盛期と比べると「2ドアクロスシート」「非冷房」「単行」というキーワードが寂しさを誘う部分もありますが、伊豆急の新たなマスコットとして平成23年から8年間、堂々と走りました。
外観は伊東方と伊豆急下田方で若干塗装等で異なる部分があり、一粒で2度美味しい感じです。冷房機器が屋根上に設置されていますが、単行では使えなかったとのことです。
今後のことについて、引退乗車時には「まだ何も決まっていない」とのことでしたが、愛されるキャラクターだからこそ、伊豆急でまったり余生を全うして欲しいものです。
(取材・撮影 伊豆急行線・片瀬白田〜伊豆急下田)

 

 

 


車内全景です。2ドアでトイレ無し、ドア周りはロングシートですが、それ以外はクロスシートの車内です。昭和30年代地方私鉄で良く見られた座席配置ですが、20mの大型車では珍しかったのではないかと思います。
復活にあたって隅々まで手を入れた様子が車内で紹介されていましたが、その甲斐もあってくたびれたところがありません。私は薄緑の天井に仰天し、紺の座席に興奮を鎮めるかのようにゆっくり腰かけましたが、意外と加速は鋭く、まだまだ第一線で頑張れるのでは?と思った程です。


乗務員室との仕切りです。助手席側の窓が少し小さいのが面白く、仕切り扉の窓が大きいのが車窓をより愉しく見せてくれます。その仕切り扉の上には復活にあたっての伊豆急行のコメントが入っています。画像は片瀬白田方の仕切りで、伊豆急下田方の仕切りには温度計が設置されています。
画像ドア手前にはギリギリまでロングシートが設置されていることもあり、仕切り側に少し立席スペースになり得る空間が設置されているのは嬉しいです。


天井です。復活に際して天井の配線を引き直した様子が車内で紹介されていましたが、その時に冷房機器を撤去した模様です。ロングシート部分には吊革が素敵な支持方法で設けられています。蛍光灯が2列である程度間隔を開けて並んでいますが、復活にあたって電球色に近い色温度の蛍光灯を用いていたのは折角の素材の色味を活かしきれていない気がして、私としてはちょっと残念です。
その蛍光灯に照らされた中吊り広告は当時のものをコピーしなおしたものもあり、レトロな雰囲気づくりに一役買っています。


扇風機はスイッチでオンオフが制御できます。真ん中の広告は色褪せていますが、貸布団事業を営む会社の広告のようです。


床は濃いめの緑色一色。紺色とよく合います。電動車ということもあって点検蓋が目立ちます。ここも色以外はあまり古さを感じさせません。


片開き扉です。テキパキ動くというよりも、ゆっくりしっかり動く印象です。鴨居部分があまり自己主張していませんが、天井と同じ色の化粧板を使い、ちょうど分かれ目も天井と合わせているのがポイントです。ドアエンジンはロングシートの下にいて、非常時のドアコックもロングシートの下に見えるハンドルになります。
クリーム色の化粧板に短めの手すり、そして戸袋窓の2段窓っぽい装飾も懐かしい気分を高めてくれます。


その2段窓っぽい装飾の戸袋窓から窓周りです。荷棚はまさに「網棚」で、クロスシート部分には網棚の下に帽子掛けもさりげなく。ロールカーテンも濃いめの緑色でスタンバイ。大きな窓も良いけれど、形の整った窓が端まで続くスタイルは見ていてスカッとします。


座席周りです。面白いのはクロスシートの背面、わざわざ紺色に塗っています。各社各様といったポジションになりますが、モケットを貼るわけではなく、わざわざモケットに寄せてきている点は単色モケットだからできる技だと思います。
灰皿があった跡が残っていますが、さすがにそこまでは復活しませんでした。


座面のスプリングがかなり効いているロングシートです。3人掛けで、4か所設置されています。このフレームや袖仕切りの丸みがなかなかエモい仕様です。くたびれた様子はありません。
座面の豪勢なバウンドに対して背もたれがストンと薄い感じですが、この薄さ、実はクロスシートでも感じますので、居心地の良し悪しはなかなか甲乙つけ難いものがあります。


クロスシートです。急行型のようなパッケージですが、窓側にひじ掛けはなく、通路側のフレームを斜めに切って取っ手をつけています。こちらもしっかりメンテナンスされているようですが、背もたれの薄さが気になりました。座面と背もたれが離れているので垂直…というわけではないですが、113系や115系のような腰にジャストフィット…の一時代前の座り心地が味わえます。
紺のモケットはごく一般的ですが、ひじ掛けの紺はやはり珍しい存在です。


斜めに切って取っ手をつけました、の図。この形態の取っ手、類似系は国鉄80系電車やキハ10系、南海ズームカーで見られたものです。ただ、この形態でよく見かけるものはビス止めの部分がフレーム伝いにもう少し長いもので、握る部分で止まっている物はなかなか見かけません。それこそタイムスリップしてここぞとばかりに見ていきたいものですが… また、リフレッシュ時にヘッドレストカバーをビス止めしてしまったので、この中がどのようになっているかがつぶさに観察できないのは残念です。


テーブルには栓抜きが備わっています。天板の真ん中に穴が空いていますが、貸し切り運転などで大きなテーブルを設置する時に使うようです。やはりその下の灰皿はありません…。
伊豆急下田駅には駅弁も売っているので、このテーブルも大活躍だったに違いありません。


ドアコックの説明です。矢印が格好良いですが、表記そのものはあまり目立ちません。
蘇ったハワイアンブルー、昭和、平成、そして令和を駆け抜けました。
 
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