広島電鉄  570形
 
  1924年に製造された神戸市電の車両が、1971年に他の車両とともに広島にやってきました。車体鋼体こそは1924年生まれということらしいのですが、我々が目にするのは1958年から62年にかけて車両更新を行った後の姿、さらに方向幕を前面につけた姿です。広島電鉄移籍後さらに冷房改造を施すあたりはその更新のおかげでもあり、今日に至ってもまだ1両だけとはいえ乗れる環境にあるのが嬉しい限りです。
現在は朝ラッシュを中心とした登板で、良いタイミングで「日赤病院前」の方向幕を掲げるところを見たことは多々あります。
そんな中、選挙が近づくと早々に寝ぐらに帰ることなく「花電車」として活躍することもしばしば。令和3年度の再選挙のキーワードは「だまっとれん。」…孤高の570形、心からの叫びにも聞こえる「だまっとれん。」…そう、私はこのコンテンツでは極力だまっとこうと思います(^^;
(取材・撮影 広島電鉄宇品線・広島港 他)

 

 

 


車内全景をご覧いただきます。高い位置の丸みを帯びた天井が実に気持ち良い車内です。
側面窓周りや袖仕切りの色は普段あまり見ない色で、まわりくどく言えば「緑がかった灰色」になります。この重たい色は広電350形あたりでも見られますが、この世代限りの色でもあり、懐かしく思われる方も多いのでは、と思います。このちょっと懐かしい雰囲気に優先席の標記、冷房、増設された吊革…ラッシュの主としての装備もしっかり、しかし違和感なく備わっているところに広島電鉄の努力が垣間見られます。グッジョブです。


登場時は前・中・後の3ドアだったそうですが、その後大規模更新時に後ろのドアを廃止したこともあり、今では乗務員室のすぐ後ろまで座席が伸びています。袖仕切りのすぐ奥には丸い助手席が備わっています。
仕切りは中央と、天井からの下がり壁でT字状に構成されています。ちょっと独立しているようにも見えますが、この世代の車両ではよく見られるスタイルです。
その下がり壁にぶら下がっているのは運賃のご案内です。液晶ディスプレイなどの運賃や次駅をお知らせする装置が無い分、仕切りには広告や路線図がズラリ。

 
天井から吊革を支える金具が大変セクシーな天井です。当時から銀色だったかどうかはわかりませんが、この車両の翌年に装備された車両の形式図にも極めて似ている形の金具が描かれていることから、製造当初の雰囲気を今に伝える、素敵な金具です。
冷房は吹き出し口のみの設置で、蛍光灯は間隔を開けて設置されています。代わりにビッシリついたのが中央列の増設された吊革で、よく中吊り広告の合間を縫ってこんなに…否、少し走るとあっという間に活躍することになります。恐るべし。


床です。この図面からではわかりにくいですが、画像真ん中の鉄板部分からドア方向にかけて、それぞれ緩やかな傾斜がつけられています。実際乗っていても極端な傾斜ではないですし、座席を見て「あ、ちょっと斜めになっている…」と思うくらいですが、ノンステップ車でよく体感する傾斜はこの世代の車両にもあったのだと思うと、感慨深いものがあります。ただ、特に鉄板部分は雨降りの日は滑りやすくなると思いますので、乗り降りの時には要注意です。
そして、木の床ならではの踏み心地。良い音風景でもあります。

 
ドア周りです。入口、出口ともに片開きドアです。周りの窓と同じ高さに押さえられた、実に自己主張の無いドアです。自己主張がなさすぎて入口・出口と書かれていますが(^^;; これは広島電鉄の他の車両でも見られます。塗られているので650形のように木目がバリバリ見られるドアでは無いものの…内張りを見る限りでは木を使っています。
ステップがちょっと高いなぁと思うドアだけに、入口ドア付近には増設された縦方向の握り棒も頼りにしそうです。
その脇、戸袋窓は登場時は丸窓(!)でした。現在も戸袋窓の部分には内側に保護棒を設けています。


一方、外側に保護棒がついたのが側窓です。1つずつロールカーテンも備わって、下の窓が開くようになっています。こちらも木の枠です。ポイント通過時はさすがに窓のガタガタ音が車内に響き渡りますが、走行時は至って静かです。

 
座席です。床の緩やかな傾斜は座席下の蹴込み板の形状で把握できると思います。どちらも両側に袖仕切りがついた緑色のモケットの座席で、他の車両と同じく優先席のビニールが背もたれにかかっています。
座面はバネが効き、背もたれが薄いタイプのロングシートは奥行きも浅め。いかにも路面電車ならではのセッティングです。座席配置もシンプルなので、ドアからステップを上がった後の乗客の動きがスムーズです。
ちょっと興味深いのが袖仕切り。なんだか家具の肘掛けのようなデザインはなかなか見ないものですが、この車両の翌年に製造された車両の図面とは若干形状が異なります。ここも登場時から変わらないはずですが、その図面の変更点は手前の縦方向の意匠に丸みがついたくらいで(^^; 私としては果たして図面通り作られたかどうか、そろそろテレビ宣言に調べてもらいたいものです(^^;;;


無線LANのステッカーと神戸市電出身のプレートが並ぶ車内。鋼体は日本最古の電車だとか、日本最古の冷房付き電車というフレーズをweb上では見かけましたが、古いことを過剰にPRする場面は一切なく、日常に徹する姿に美しさを感じました。

花が輪になる、輪が花になる。神戸から贈られた花が広島でも咲き続けることに、心からの感謝。
 
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