阪急電鉄  6300系「京とれいん」
 
  9300系の増備で京都線特急から引退した6300系。嵐山線ワンマン車としての復活にも驚きましたが、もっと驚いたのは2011年の「京とれいん」運行開始でしょう。6両編成に短縮の上、外観も煌びやかな装飾を施し、扇形のヘッドマークをつけた姿に往年の特急の姿を重ねられたか、全く新しい列車として受け入れられたかは人それぞれですが、十三を通過する「快速特急」という種別にワクワクしたのは、きっと私だけではなかったと思います。
利用状況は好評のようで、7000系の京とれいん「雅洛」もデビュー。2本体制でしばらく行くのかとおもったら、コロナ禍での運休、そして再開するも2022年12月で「京とれいん」引退…。ホームドアの関係などの理由があることはわかっていても、あの落ち着いた車内がなぁ…と嘆きたくなってしまいます。
(取材・撮影 阪急電鉄京都線・河原町 他)

 

 

 

 
3号車、4号車、京町家をイメージして大きくリニューアルした車内からご案内します。右の画像はデッキ部分から撮影したものです。固定クロスシートが展開しており、デッキとの仕切りは左右1人掛けずつ、それ以外の区画は片側2人掛け、もう片側1人掛けの配置です。また、この2両のうち3号車の4号車寄りには車椅子スペースを備えています。
ガラッと雰囲気を変えて京とれいんの目玉になるような構成で、特に周りが気にならない衝立はグループ客には良いかなぁと思う反面、シートピッチが広い分特に通路側に座ると意外と周りの雰囲気が気になってしまったものです(^^; この後登場した雅洛では衝立がなくなってしまいました(^^;
側窓はロールカーテンに改まって、軽快な装いになっています。

 
前後2両は6300系の持ち味である転換クロスシートを主体とした車内です。左の画像は大阪梅田方の2両、右の画像は京都河原町方の2両の様子で、それぞれ「蘭の華散らし」「麻の葉」をイメージしているようです。
私個人的にはこれまでになかった鮮やかな装いとして1,2号車の車内がお気に入りですが、初めて乗った時にあまりの美しさに息を飲んだ記憶が今も蘇ってきます。化粧板で腰壁を表現し、濃淡はっきりしつつ落ち着いた雰囲気にまとめているところはモケットの彩をより映えさせています。お見事。

 
乗務員室との仕切りです。左の画像が梅田方、右の画像は河原町方です。化粧板を張り替えていますが、座席配置は8両の特急で走っていた時から変化なく、ロングシートが待っています。観光需要を考えるのであれば前面展望をウリに…とクロスシートを置きそうな区画ですが、ロングシートでも始発駅の時点で埋まるのが早かった記憶があります。
どちらの仕切りも木目の柄を仕切り扉周りとその左右で変えています。戸袋部分の掛け軸風ポスターもそうですが、結構芸が細かいですし、それらがあまり煩くないのが良い塩梅です。

 
3号車、4号車のデッキとの仕切りです。扉がないものの格子状のもので、ここもなかなか良い雰囲気です。
ただ、多客期のデッキのことを考えるともう少し実用的に、例えば仕切りにも手すりを設けても良かったのかな、と思います。手すりが仕切りのデザインに影響を…というのであれば、阪急9300系初期車のドア脇手すりのようなデザインを採り入れても良かったのではないでしょうか。
車椅子スペースは手すりのみの設置で、車椅子やベビーカーが仕切りから少しはみ出す仕様です。

 
前後2両の車端部です。ドアから妻面まであまり距離がありませんが、これがホームドアと合わないという、泣くに泣けない問題…。
木目柄のシートを全面に貼り、各車両1か所観光パンフレットが設置されています。大きな枠のポスターは阪急沿線インフォメーションで、京とれいんに特化したものではありません。
ここは京都線特急時代は折り畳みの補助座席が設置されていました。京都方先頭車には公衆電話もありましたが、いずれも手すり付きの仕切りに落ち着いています。車椅子スペースがあまり多くないなぁ…と思っていただけに、立席スペースとしてうまく利用している様子が伝わります。

 
天井です。左の画像は3,4号車、右の画像は1,2号車の車内の様子で、登場時からの天井のデザインをそのまま保っています。吊革はドア周りを中心に配置していますが、これも京都線特急から変化ありません。
左の画像、カバーつきだった蛍光灯が間接照明にリニューアルされています。木目柄のシートも反射が抑えられて落ち着いた雰囲気に寄与していますが、この構成で吊革はさすがにつけにくそうですネ…。

 
床は全車揃って灰色の柄物にリニューアル。ここの軽快さも車内の雰囲気に一役買っていますし、上手いこと引き締まっているように見えます。
この手の車内だと阪急お得意の石畳調の柄が来るのかなぁと思っていました。「似たようなもの」のガッカリ感をこの車内で遭遇しないことって、実はシアワセなのかもしれません。

 
ドア周りです。ガッチリリフレッシュした3,4号車と6300系登場時の面影が若干感じられる1,2号車の画像を置いてみました。
雰囲気は3,4号車のドア勝っていますが、混雑時のことを思うと吊革があっても良かったのでは、と思います。
ドアそのものはドアの化粧板を貼り替えた程度で、見覚えのある形状の両開き扉がスタンバイ。列車運用にある程度限りがることも幸いしてか、いわゆる車内案内表示機がありません。

 
ここからは怒涛の座席パープルサンガ。まずは乗務員室後ろのロングシートです。2人掛けで、左の画像は梅田方、右の画像は河原町方のモケットです。
京都線特急車だった時はモケット張りの肘掛けでしたが、京とれいんではレザー張りに改まっています。モケットが変わってわかりやすくなった点として、肘掛けの部分と着座する部分でクッションをしっかり分けている様子が伺えます。この余裕の作り方はお見事です。ただ一方、着座時に頭の後ろに掛け軸調の「作品」があり、ちょっと座る時に遠慮しがちになってしまうのは何とかならなかったものでしょうか…(^^;
昔ながらのバネが効いたロングシート、私はこの触り心地のモケットもアリだと思います。


続いては3,4号車で登場する固定クロスシートです。
背面が見られる区画は車椅子スペースの隣だけになりますが、あまりここには飾り気がない様子…。

 
固定クロスシートは斜め撮りでお届けします。まずはその端のクロスシートで、端は全て1人掛けになり、2人1組、4人1組の他に3人1組の区画が2か所ずつあります。
畳と座椅子を連想させるクッションが雰囲気を盛り立てますが、座面のフレームがプラスチックな質感で、やや安っぽく感じてしまうのが勿体ないところです。正直、格好も背もたれがやたら高くてイマイチですし、これに沿って座ると背筋がよく伸びそうです(^^;;
 
前後両側に座席が展開する区画では2人掛けのクロスシートもお目見えします。背もたれはわかれていませんが、座面は一応分かれています。背もたれが分かれていないのは、分けられない事情があるのでしょう。
固定クロスシートはこれまで様々な物を見てきましたが…なんかもう少しスタイルが洗練された物を期待してしまいますし、通路側の肘掛けの物々しさが重みを一層増しているように感じてしまいます。正直、肘掛け内側の微妙な窪みの清掃が大変だったのでは、と労いの声を掛けたくなるものです。


テーブルです。乗車時間を勘案するとこれくらいの小さいテーブルがベストチョイスだと思います。
そして、座面とひじ掛けの良い空間のバランスはこのクロスシートでもみられます。

 
前後各2両、ドア〜ドア間は端に固定クロスシート、それ以外に転換クロスシートをそのまま用いています。ただ、モケットの模様を変更しているだけあってかなり新鮮に映ります。ヘッドレストカバーをモケットに合わせて色を変える演出に至っては…お主、なかなかやるなぁと感心する次第。
その固定クロスシートにも窓側の肘掛けとともにクッションが分かれている様子がしっかり伺えます。先ほどの固定クロスシートとは異なる柔らかすぎの座面で、まさに沈み込むような座り心地になります。嗚呼…観光列車の皮をかぶった阪急京都線特急の味わいそのものです。

 
フットレストバーつきの転換クロスシートもやはり柔らかめの味付け。こちらは固定クロスシートよりも背もたれの高さが低いので、コクーンな空間が苦手な方もウェルカム。これだけ今風の味付けをガンガン施しているのに鎧戸という現実がいかにも阪急車らしいです。
独特な形状の肘掛はレザー張りに代わりましたが、形状は京都線特急時代から変化ありません。段織りモケットの再現を脳内でなんとかする必要はありますが、こちらも平成前半の京都線特急の追体験ができます。

そうだ…嵐山線の転換クロスシートと交換しませんか?(殴


2ドア6両の素敵な空間にピリオドが打たれるのは勿体ないような、寂しいような気持ちが入り乱れていますが、
せめて、戸袋部分の「作品」は何らかの形で次に継承していって欲しいものです。
 
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