秩父鉄道  1000系
 
  秩父鉄道1000系です。しかし、これはどう見ても国鉄の通勤電車。全国的に見ても国鉄やJRの車両が私鉄に譲渡されるケースは珍しいですが、埼玉県の秩父鉄道では国鉄101系の勇姿を今なお体験することができます。
投入されたのは1986年。3年間で総勢3両12編成の大所帯となりました。外観こそ一部冷房化やダブルパンタ、秩父鉄道の社章など改造された部分が見られるものの、それらは往年の懐かしさを思い浮かべる障害にならない小さな改造にしか過ぎません。さらに近年は開業110周年ということで国鉄時代や秩父鉄道の懐かしい塗装に塗り替えており、画像のように遙々関西線の塗装を施した編成も現れています。
後継車の増備が始まっています。乗車はお早めに。
(取材・撮影 秩父鉄道・三峰口)

 

 

 


先頭車の車内全景からスタートです。先頭車は冷房改造が施されており、外観ほどの違和感はありませんが車内もダクトや吹き出し口で天井周りが目立っています。ただ、側窓より下は明らかに国鉄時代の面影をそのまま残しています。4ドアロングシートは熊谷口の通勤ラッシュに威力を発揮します。
地元の方にとってみたら単なるボロ…としか言いようがないでしょう。でも、紺色と薄緑色の空間で「鉄分」を育んだ人々には最高の環境です。…と、山一つ越えた青梅線の103系で育った私が言ってみます(^^;;;


乗務員室との仕切りになります。まず珍しいのがアコーディオンカーテン。これで荷物室と客室と手軽に分けることができます。あまり用いた場面を見たことがありませんが、取材で乗った1000系にはすべての先頭車両で設置されていました。
そのアコーディオンカーテンだけ目をつぶれば、あとは小さな仕切り窓に薄緑色の空間が待っています。初期車は仕切り窓が大きかったものの、秩父鉄道に移籍した101系は仕切り窓の小さいタイプが圧倒的に多かったようです。その窓手前の握り棒は車両によって一本タイプと二本タイプがあります。
ちょっと薄緑色が濃い気がしますが…気のせいですよね?!


車端部も薄緑色、戸袋窓から妻窓まで完全装備。両先頭車ともこの区画は優先席の扱いを受けているため、優先席でない紺色シートの車端部は中間車のみのお楽しみということになります。
優先席ということで吊革の色や座席モケットの色を変えてPRしています。前者は同じような内装の車両もいたJR東日本の103系でも恐らく見られなかったであろう組み合わせ、後者も秩父鉄道独自の色になります。シルバーというよりも濃いグレーの装いはイマドキならでは。

 
天井周りです。右の画像は扇風機で、車両によってはこの後紹介する青色の羽根を用いていることがあります。
先頭車は冷房化改造が施されており、屋根には分散クーラーが3台載っています。ただ、車内側は分散クーラーであることを隠すように103系の冷房車のような長くて太いダクトと吹き出し口が設けられています。見た目的にはJRが積極的に採用したインバータークーラーとは雲泥の差ですが、一部吊革を撤去した後が生々しく残ってしまっています。

網棚は秩父鉄道に来てから貼り替えているようです。東京メトロの車両に見られるようなスタイルで、垂直に太い針金を組んでいます。


床は文句のつけどころがない灰色一色です。


ドア周りです。ステンレスのドアに換装されてはいるものの、灰色のゴムや鴨居部の薄緑、そして吊革のないシンプルな姿が哀愁を誘います。見た目は全く変化がありませんが、秩父鉄道に来てからこのドアを半自動ドアとして扱っており、ドアを手で開け閉めすることもあります。…なんということでしょう、半自動ドアにしては手がけが小さいではありませんか。これは匠に大きくしてもらわねば(^^;;


窓周りです。戸袋窓、妻窓も含めてロールカーテンは現存しています。2段窓はどちらも開くようになっていますが「全開」はできないよう途中でストッパーを設けています。


さぁここからは怒濤の長瀞ザセキ下り。まずはドア〜ドア間の7人掛けから。
オリジナルとは座席下ヒーターの網が異なるように思えます。ヒーター増強などを行っている関係でしょうか。ただ、足元のスタイルから紺色のモケットまで101系の雰囲気そのまま。スプリングの効いた背もたれの薄い座り心地もそのまま。画像は少し背もたれのモケットが色褪せてしまっていますが、くたびれた座席は取材の範囲内では見られませんでした。マメな整備に感謝。


優先席もヒーターの網を一新し、モケットを灰色にした他は変化がありません。シンプルな袖仕切りと妻面のちょっとしたスペース、どっちの方が居心地良いか気になって仕方がない環境もそのままです。

若干座面の位置が高いと思いますが、それも101系からの継承。スリリングな乗り心地共々この車両のダイジナトコ…と言ってしまうと地元の方は泣くに泣けなくなってしまいそうです。



…さて、ここからが1000系の真骨頂。中間車の車内です。

何やら妙な予感がしますが… 101系も登場時は非冷房車でした。
その後冷房改造車も登場しましたが、103系よりも長寿だったため、改造車もあまり多くありませんでした。
秩父鉄道に譲渡された時も非冷房車の状態でした。その後、なぜか先頭車だけが冷房化改造されました。
ということは…

 
中間車の車内、全景と車端部です。
平成の世も20年が過ぎ、まさか非冷房の「国電」が見られるとは思ってもいませんでした。中間車まで冷房化できなかった懐事情と、毎年夏にひぃはぁ汗をかく地元の方には非常に迷惑な話ですが(^^; こういうのを本当の「レトロ」と呼ぶのではないでしょうか。昭和の高度成長を支えてくれた車内がほぼそのまま残っていることにただただ感激です。

 
何もない天井の丸み、そして先頭車で撮った画像ですが青い羽根の扇風機も合わせてどうぞ。


座席も中間車限定の3人掛けロングシートを紹介します。もちろん7人掛けの座席も紺のモケットでスタンバイしています。
非冷房の車内では寒色系の色が実に涼しさを演出しているかのように見えますが、近年の猛暑と「冷房のある暮らし」に慣れた身にはなかなか厳しいのではないでしょうか。この車内で通勤していたオトナに「甘ったれるんじゃない!」と怒られそうですが(^^; ただ、紺のモケット3人掛けはこの中間車しかないので、夏場この座席を堪能したい方は汗ダラダラで座らなくてはなりません。



こうした貴重な機会が都心から近くにあるとは…一趣味人として、つくづくこの環境が贅沢に思えてきます。

非冷房には非冷房なりの利点があり、美点もあります。フラットな天井が当たり前になったからこそ、この緩やかかつ無機質なカーブに美しさを覚えずにはいられません。

鉄道博物館より五感全てにおいて迫力がある実体験ゾーン(通勤電車部門)。閉館前に、ぜひお試しを。



…半自動ドアのスイッチと間違える人、いらっしゃるのでしょうか(^^;;;;

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