有田川鉄道公園(旧有田鉄道)  キハ58形
 
  有田川鉄道公園では、日によってレールバスの他に有田鉄道で使用されていたキハ58形の体験乗車ができます。2019年春、子供たちの塗り絵が飾られた車内に入ってレトロ・トリップを満喫しました。
このキハ58形がまた面白い経歴で、元々は急行「アルプス」併結用として富士急行が3両製造しました。3両のうち両運転台車はこの車両だけで、予備用としての名目でトイレや洗面所を元から作らず、片一方の戸袋窓の幅を広げ、扉の幅を少し狭めました。
その後、3両とも有田鉄道に移籍。ここでも国鉄への乗り入れの時に色々あったようですが(^^;;、両運転台車はその構造が功を奏して廃線まで活躍する事となりました。
廃線後は有田川鉄道公園で動態保存をしています。DL17の牽引というなかなか体験できない乗車体験、愉しいですよ。
なお、画像はこれからEF63がくっつくシーン…のイメージです(^^;
(取材・撮影 有田川鉄道公園)

 

 

 


車内全景です。窓際荷棚の下に塗り絵展示がありますが、車内に一歩入った瞬間の美しさ… 紺のクロスシートが端から端まで続いた落ち着いた車内、これぞ急行形の醍醐味だと思います。往年の車内を見事にそのまま今に伝えるこの車両は素敵な大人が紺の座席に身を委ね、適度な揺れと有田川沿岸の景色をゆっくり愉しむのが一番です。さぁ、パソコンの電源を切って、今すぐ乗りに行きましょう。なお、運転日は有田川鉄道公園のホームページ、フェイスブックでご確認を。


金屋口方のデッキとの仕切りです。この部分の構成はこの車両独特で、新造時から洗面所、トイレを設置しなかったこともあり、幅広の戸袋窓を設け、4人1組のボックス席に仕立てています。面白いのは戸袋窓に合わせてドアエンジンのカバーが伸びていることで(^^; 他のキハ58形ではそうそうお目にかかれない長さ…です(^^;;; その戸袋窓の長さの割には隣の側ドアの幅は短く、ドアが開くと戸袋窓にひょっこり登場する様子は金屋口駅で見ることができます。

 
こちら、鉄道公園方の仕切りです。仕切り扉の上には有田鉄道のプレートが貼られています。
通常幅の戸袋窓、座席は2席1組の区画になります。これがいわゆる「見慣れた仕切り」になります。
有田川鉄道公園ではヘッドマークなどの置き場として活用している状態です。取材時点ではここに設置された「幅が狭い座席」は反対側で心行くまで堪能できました。


弧を描く天井です。扇風機、長さがちょっと短めの蛍光灯、中吊り広告の吊り具に換気用の通風孔。家庭用エアコンも窓上のエアコンも無い、最上の状態で出迎えてくれます。…これ、動態保存車だから言えることで、実際有田鉄道時代は冷房付きのハイモと非冷房のキハ58、どちらが好まれていたのでしょうかね…(^^;;

 
扇風機と扇風機のスイッチです。扇風機の銘板には「川崎型直流天井扇」との表記があります。富士電機製で昭和40年5月に製造…とあります。それだけの歴史があれば維持するのもなかなか大変なようで、扇風機のスイッチはボタンが緑のものや赤と白のもの…など、場所によってマチマチです。


灰色一色の床です。これがまたキレイに整備されていて、パッと車内に入った時に年相応のくたびれた様子が感じられません。座席の下などに目を転じれば素材の経年を感じる部分もありますが、周りの風景を穏やかに反射する灰色の美しさが感じられるのは、何よりメンテナンスの賜物かと思います。


ドア周りです。画像は鉄道公園方のデッキで撮影したものになります。半自動ドア扱いもできますが、動態保存運転では自動での開閉になります。薄緑色で囲まれた区画、ドアも内側は薄緑色の塗りドアになります。ステップを1段上がって乗る格好で、小さな明り取り窓がそのまま残っているのも要チェックです。
ドアマットは現役時代には恐らく無かったものかと思います。


ドアの取っ手、車外側と車内側です。どちらも出っ張っているタイプのもので、ドア自体の重さはそこそこあったと思いますが、握りやすかったのでは…と思います。


側窓です。1段上昇窓はかつてのように開けることもでき、ロールカーテンも備わっています。
そしてその上の荷棚。紐で編んであります。へたりが無いのでどこかのタイミングで編み直している可能性はありますが、こういうちょっとした設備の今・昔がひも解けるのも魅力です。

 
座席は3種類です。妻面に面したクロスシートは座席幅が確保できない事から窓側の肘掛けを省いているのは良く見かけますが、その向かい側、本来窓側の肘掛けがあっても良い座席も…なぜか肘掛けがありません。妻面の座席に配慮して肘掛けを外したことかと思われます。戸袋窓の座席は2人1組で、座ると目の前は前の席の背面…というシチュエーションが多い急行形車両だけに、この車両の「幅は他と一緒だけど窓側のひじ掛けが無い座席」、結構珍しいのではないかと思います。
中間部分は配管の塗装の具合が足を載せていたことが伺える(^^;;固定クロスシートが整然と並びます。肘掛けの下はフレームで、座面のクッションは窓から少し離れたところで完結している点もポイントです。

座面の強烈なバネに身を委ねて想い出に浸りたいシチュエーションですが、所要時間的には「大垣夜行のC寝台ごっこ」をする暇もなく金屋口駅に着いてしまいます。思い出の再現はほどほどに。


これも今はなかなか見かけない灰皿、そしてセンヌキもついたテーブルです。センヌキの表記が残っているかどうかくまなく探したつもりですが、こちらは残っていませんでした。知る人ぞ知るセンヌキ…なんだか、ゾクゾクしますネ(殴


この座席のもう一つのポイントが座席番号です。1A1B1C…ではなく、昔の近鉄や東武のように通し番号で座席番号が振られていました。窓上のプレートにも数字だけが書かれていましたが、座席の上にも映画館の座席プレートの如く4つの数字が書かれたプレートが貼られていました。
キハ58形が入った「急行かわぐち号」はその後165系で電車化されます。後年、富士急行がリリースした「急行かわぐち号」指定席急行券は165系の時のものを復刻したもので、○号車○番○席と記入できる硬券でした。
ということで、キハ58形時代の硬券を復刻して座席番号まで勝手に窓口で指定、有田川鉄道公園で実際に乗ってみた。
…なんて横断企画、いかがですか?

 
ちょうど、桜の花が咲くころの訪問でした。
車窓は見事な桜から始まり、有田川越しの里山をゆっくり眺め、佇まいが素敵な金屋口駅に至ります。
このエモい空間が令和の世に体験できる幸せ。この幸せが春風に乗って多くの方に届いて欲しいものです。
さぁ、乗りましょう。
 
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