有田川町鉄道公園(旧有田鉄道) ハイモ180形
 
  1984年にこの車両が登場した時の反応が今でも気になりますが、天井まで回った側窓につぶらな瞳…ローカル線のスターとして熱狂的な歓迎を受けたのではないでしょうか。富士重工のレールバス「LE-CARU」として岐阜県の樽見鉄道に入線し、その後有田鉄道にやってきたハイモ180形です。
2軸で長さ12.5mの小型ディーゼルカーはあまりにも可愛かったようで、ラッシュ時の輸送力に課題を残す結果となり、車体長がもう少し長めの「LE-CAR」を採用する路線が増えていきました。
令和の時代は紀州鉄道に1両残っている他、宮城県のくりはら田園鉄道公園と有田川町鉄道公園で体験乗車ができます。有田川町鉄道公園の川のせせらぎを聞きながらゆっくり移動し、金屋口駅の終着駅たる佇まいはショートトリップにうってつけ。藤並駅からレンタサイクルで廃線跡をたどるのもお勧めです。
(取材・撮影 有田川町鉄道公園)

 

 

 


車内全景です。ドア周りはロングシート、中央に固定クロスシートを配置していますが…この配置にビックリ。左右で座席の向きを変えています。京急2000形やJR200系新幹線が現役だった頃に「集団見合い型」「集団反見合い型」などの座席配置キーワードを見て「好きなのか嫌いなのかわからない集団だなぁ」と合コンに見立てては嘆いていた私のような貧相な語彙力の人間に、この配置を一言で表すことは難しいものです(^^;
外観のドアステップからも想像がついたことかと思いますが、通路幅が思ったよりも狭いのもポイントです。第3セクター転換への期待値が高い中でこの車内…ラッシュ時はなかなか大変だったのではと思います。

 
運転席は中央に設置されています。その背後には整理券発行機と運賃箱がスタンバイ。配管がある方が金屋口方の車端部ですが、整理券発行機の配置などが若干異なる…どころか機械自体異なるので、有田鉄道の頃に交換したのかもしれません。
シンプルな仕切りの先には運転席があるわけですが、その左右にはステップがかなり大きいドア周りが構成されています。半ば離れ小島のような運転席に窮屈さを覚えますが、その手前の固定窓の区画には座席を設けないことで乗客の動線を確保しています。現役時代であればその部分にもう少し手すりが欲しかったところです。


通路幅の狭さを勘案して、ロングシート上に設置された吊革もどことなく窮屈そうです。蛍光灯はカバーつきのものが1列に配置されています。そしてその周りの化粧板は富士重工お馴染みの丸い模様がついた白いもので、微かな模様に胸がトキメキます。レールバスのマストアイテムだった冷房は窓のそばに吹き出し口を設けていることから、ツルンとした天井に仕上がっています。バスみたいと言われれば「確かに」と頷くシチュエーションです。


こちらも昭和の終わりにブレイクしたベージュ一色の床です。座席モケットに見事にマッチしています。


折り戸です。前面の窓の傾斜に合わせてドアの形状が5角形になっているのが大きな特徴です。また、窓枠ギリギリ一杯に窓が伸びている点もバスそのものです。折り戸故に開いた時にドアについた乗り降り用の手すりが役に立ちそうです。この折り戸の動作を見るだけでも楽しそうですが…私、うっかり金屋口駅でのドア開閉シーンを失念してしまいまして… 多分何の違和感もなくごくごく自然に開いたと思います。すみません。
ステップは2段。ドアの外にも続いているので足元注意で進みたいところです。


このレールバス最大の特徴が着色がかった側窓だと思っています。バスでは主流だった窓際の吹き出し口も鉄道車両ではまだ出始めの段階、それに引き違いカーテンにグラデーション…一歩見間違えば観光バスのような出で立ちに高級感を覚えたのは子供の頃でした。大人になって、窓の下の座席を見ると現実が… この車両は特にクロスシートの半分の座席が進行方向逆向きという切ない現実が待っています。
なお、冷房の関係で車内中央付近は荷棚がありません。

 
2人掛けのロングシートです。進行方向右側前方、左側後方のロングシートになります。暖房があるなど細かい差がありますが、クロスシート側から見ると座面下のカバーが無いのには少しビックリしました。
その座面下のカバーや袖仕切りの形状、よく沈み込む座り心地を体感すると外観の可愛さからは想像できない、それなりの安定感を感じます。
 
クロスシートの背面に接しているロングシートは1人分人数が多くなっています。左の画像、金屋口駅方の3人掛けロングシートは座面のみモケットが変更されています。よくメンテナンスをしている印象で、ビックリするような補修の跡は特段ありませんでしたが、やはり生地の角になるとちょっとくたびれた様子が伺えます。それでもこの山陽電車で見かけそうなモケットは頑張っていると思います。
ロングシートの背もたれの上にはカーテンがありますが、引き違い故に座っていると気になるシチュエーションもあるかもしれません。

 
足元がちょっと狭いクロスシートの座席です。これ、意外と撮影には苦労しました。狭い車内、相対する背もたれ、狭いシートピッチ… そのシートピッチを象徴するのが通路側肘掛けの省略で、通路への出入りをしやすくしています。バスのクロスシートをイメージするような出で立ちですが、この手すりの路線バスの座席を見たことがありません。故に少し伸びた印象が強い背もたれが通常仕様かどうかがいまいち不明瞭ですし、座面を低く感じるのは座席の経年が理由か、私の体重が理由か…今一つ掴み切れません。
それでも…有田鉄道の距離であればこのくらいの座席でも十分だったと思います。


富士重工お馴染みのピクトグラムやボタンに明朝体で禁煙…この明朝体で禁煙、結構昭和な香りがしませんか?


昭和と言えばこちらも…500円札の表記は久々に出会いました。

昭和の一瞬の香りを今に伝えてくれるつぶらな瞳の小さな車両。
つぶらな瞳に涙が出そうな世の中だからこそ、ぜひ動いているうちにたっぷり体験していただきたいものです。
基本的に自走はしないですが、ゆっくりモーターカーに牽かれるのもなかなか体験できないものです。

有田川の先にはふるさとの甘酸っぱくて穏やかな景色が広がっています。

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