秋田内陸縦貫鉄道  AN−8900形[片運転台車]
 
  秋田内陸縦貫鉄道のフラッグシップとして活躍してきたAN-8900形です。急行「もりよし」やJRとの直通運転での活躍が記憶に新しい…という方も多いと思いますが、気が付けば急行は単行列車に、JRとの直通も尻すぼみになってしまい、今回取り上げる片運転台車は2021年9月に引退となってしまいました。
全車両運転台でデビューしていればもっと活躍していたかもしれない、と嘆く気持ちもあろうかと思います。ただ、登場当時は前面展望を爽快に見せること、そしてサロン席にカラオケ、冷蔵ショーケースが備わっていることがフラッグシップとしての条件だったのでしょう。世は団体列車花盛り、カタログでの取り上げられ方も「急行・イベント列車用」でした。
そんなカタログからデザインに対して一言引用するならば「特にヤングレディに人気があります。」…最後まで色褪せないデザインだったと思います。
(取材・撮影 JR奥羽本線・弘前 他)

 

 

 

 
車内全景です。乗務員席から4列転換クロスシートが展開し、右の画像のとおりサロンコーナー、そして5列転換クロスシートが並び、ドア…という流れです。JR直通の「さくら号」では進行方向向きにセットされていましたが、「急行もりよし」運用では4人1組でセットされていたこともありました。
登場時は茶系のモケットだったようで、張り替え後のモケットは車内にメリハリができ、より名鉄っぽさが増したような気がします(^^;; 座席から上を見るとサロンコーナーの灯りが早くも旅人を誘っているかのようです(^^;;;


乗務員室との仕切りです。茶系の化粧板に大きな仕切り窓が特徴で、さすが、前面展望をウリにしていただけのことはあります。真ん中にはテレビモニターを備えていますが、車端部のものよりも大きめのものを設置しています。その下、仕切り扉は客室と密閉できず、少しテレビモニターとの間に隙間が空いています。伊豆急のリゾート21ほどではないですが、お客さんの実況が漏れ聞こえていたはずで、走り始めて早々に話題になった日本初の女性運転士さんに仕切りごしに聞いてみたいものです(^^;;
良く見えることもあって、緊急時の携帯電話の使用を断る一文がテレビモニターの右隣に書かれています。

 
テレビモニターが7インチ小さい(^^;; 車端部です。左の画像は鷹巣方車両の車端部で、トイレと自動販売機があります。右の画像は角館方車両の車端部で売店スペースがあります。どちらの車端部もロングシートと妻窓が向かって右側に備わっていますが、あまり居心地の良いスペースとは言い難いところもあり、むしろ両運転台化でもしたかったのでは…と勝手に思ってしまう部分でもあります。ドアと客室の間には仕切りがあり、トイレがある車両の仕切りには着色ガラスを用いています。


この仕切りの手前にはゴミ箱がひっそりと。また、花瓶受け用の小テーブルも備わっています。もうフラッグシップのおもてなしが入って2歩で展開しているわけですが、本来このスペースは着座した人の足元になる部分でもあり、花瓶はまだしもゴミ箱まで置いてしまって良かったかどうかは考え物だと思います。私も引退までに何本かAN-8900形の列車には乗りましたが、この区画の座席の背もたれはいつもゴミ箱を背にする配置でセットしていた記憶があります。それにしても…設計の時にゴミ箱を作らなかったのは…なぜ?

 
トイレと自動販売機です。トイレは和式のもので、妻面まで伸びた仕切りがポイントでした。蛍光灯もこの部分は1列のみで、心なしか薄暗かった記憶があります。
自動販売機は袖仕切りの設置とは裏腹に登場当初から設置されていました。さすがに代替わりはしていますが、ずっとコカ・コーラ社の缶が買えるものでした。故障中との貼り紙がありますが…「急行もりよし」運用からの離脱を機に取り扱いを止めてしまったものと思われます。

売店です。簡単な仕切りにテーブル、マガジンラックがチラリと。登場当初はマガジンラックの左隣に冷蔵ケースがおいてあり、コーヒーウォーマーまであったそうです。冷蔵ケースは急行もりよしの運用中に早くも撤去されていたものの、車内販売は繁忙期を中心に行われていた記憶があります。冷蔵ケースが置いてあったところにクーラーボックスを置いていたのを見つけ、「…そういうことか…」と悟った次第、電気製品のメンテナンス、買い替えはつらいものです。


天井です。先行するAN-8800形と同じ端に冷房の吹き出し口やダクトを設けたスタイルで、その段差を上手く利用してカバーつきの蛍光灯を設置、フラッグシップとしての体裁を確保しています。画像ではスピーカーが手前に見えますが、カラオケ列車にありがちな天井からぶら下がったものではなく、天井に据え付けの薄いものでした。代わってぶら下がっているのは鯉のぼり…(^^;;;
荷棚はサロン席、車端部のロングシートにも備わっていますが、座席番号は転換クロスシートの部分のみ振られていました。今でこそだいぶお馴染みになりましたが、窓より低い位置に荷棚が設置されていました。


床はベージュ。画像はサロンコーナー付近ですが、登場時からテーブルを左右1台ずつ増設したことから、左右各1台だった頃の跡がしっかり残っています。確かにこの席数でテーブル左右各1台はキャパ不足だということを、貸し切りバスの社員旅行で学習したものです…(^^;;

 
ドア周りです。半自動ドアのボタンは設置されませんでしたが、一応取っ手のアップを右の画像でまとめました。
いわゆる塗りドアでAN-8800形でも見られるデザイン、ステップつきです。デッキの仕切りがあるとはいえ、ドア自体まで創意工夫を凝らすことはしなかったようです。


FRPで縁を作り、固定窓を備えた側窓にAN-8800形では見られない格好良さを感じたものです…そうか、これこそ「スマートな都会的センス」にあふれる外観を作り出したポイントなんだ…と!(^^;; 窓枠にもちょっとした物が載せられるように工夫されている他、転換クロスシート席にも小テーブルが備わっています。登場時はさらにその下に灰皿まで備えていたようです。


モチッとした座面の座り心地がポイントの転換クロスシートです。縫い付けで着席区分を作り、ヘッドレストに当初かかっていたカバーがなくなりました。そして、脚台や手すりの形状が名鉄らしさを高めています(^^;;
背もたれもふっくらした形状で、背もたれと座面を繋ぐパーツもチラッと見えるくらいに収まっています。腰を預ける分に不足はないのですが、転換時にちょっと重たかった記憶があります。パンフレットに記載された「ワンタッチ…」はちょっと違うかなぁ…と(^^;;
欲を言えば、窓側にも肘掛けが欲しかったです。

 
ソファー席と売店の向かいの5人掛けロングシートをあえて並べてみました。並べなくてもわかる!とお叱りの声を頂戴しそうですが、それぞれ座席の作りが異なります。厚めの座面が魅力のソファー席はしっかり座面下の蹴込み板まで作り込んでいます。これを見てからロングシートを見ると…背もたれの作りに物足りなさを感じる事かと思います(^^;;; それでも座面の奥行きはロングシートの方が若干深めで、ソファー席は背もたれの厚みの分切り立っていた印象があります。

 
3人掛けロングシートです。自動販売機とトイレに囲まれて…少し背もたれにかかった長いカーテンが少し気をつかいそうです。
ある意味周りの視線が届かない場所ではありますが…… 多分この区画をどのようにするかで悩まれたのかな?と同情したくなる3席です。同じような区画を持つAN-2000形はカーテンで仕切れる補助席つき車椅子スペースになって、さらに視線を遮ることができる区画に進化しています(^^;;

秋田内陸縦貫鉄道ではまだ土休日に両運転台のAN-8905を利用した有料急行列車を走らせています。この余裕のある寛ぎを満喫できる機会はもう訪れませんが、涙を微笑みに変えて、いつか面影を訪ねて乗りに行きたいと思います。
 
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